日本一売れてるクルマが売れてない!? 「高すぎ」「個性が消えた」新型ホンダN-BOXが抱える悩み (2/2ページ)

スペーシアのほうがユーザーのニーズをより満たしている

 内装にも同様のことが当てはまる。現行N-BOXは、先代型に比べてインパネの上端が低い。安全に直結する視界が向上して好ましいが、先代型ほど内装が立派には見えない。販売店も「現行N-BOXの内装は賛否両論」という。安全にとって大切な視界を向上させた結果、販売面ではマイナスが生じたわけで、これも車両開発の難しさだ。

 先代N-BOXのコストが高かったので、現行型はコストダウンを行った事情もある。そのために質感も下がり、背の高い軽自動車で重視される収納設備の数も減らした。

 一方、ライバル車のスペーシアは収納設備が豊富だ。主力グレードの後席には、ミニバンのオットマンのような使い方が可能なマルチユースフラップ、エアコンの冷気を後席へ送るスリムサーキュレーターなども装着される。N-BOXの開発者は「前席の形状を工夫したから、エアコンの冷気はサーキュレーターがなくても後席に送られる」というが、目に見える装備を付けることも大切だ。

 現行N-BOXでは発売後の値上げも影響を与えた。2023年10月に発売された時、標準ボディの価格は税込164万8900円だったが、いまは173万9100円だ。スペーシアハイブリッドXは、マイルドハイブリッドやマルチユースフラップの装着で、2023年11月に発売された時の価格は170万5000円と高めだったが、いまでも同じ価格を保っている。つまりN-BOXの標準ボディの価格は、発売時点ではスペーシアハイブリッドXよりも安かったのに、値上げによって追い抜いたわけだ。

 軽自動車の開発では「価格が1万円違ったら売れ行きを左右する」といわれる。ユーザーが価格に敏感で、なおかつ軽自動車は、全長、全幅、エンジン排気量が等しいために徹底的に比較して選ばれるからだ。そのために、N-BOX標準ボディの価格がスペーシアハイブリッドXを追い抜いた時には驚いた。ホンダはもう少しユーザーの気もちを考えて商品を開発すべきだ。


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渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
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13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
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