50年も前にミッドシップ+4ローターのロータリーエンジン搭載のコルベットが計画されていた! オイルショックさえなければ……な「エアロベット」 (2/2ページ)

テクノロジーを詰め込んだが市販は叶わず

 そして、1970年に引っ張り出されたのがXP-880の後継モデル、XP-882、通称「エアロベット」だったのです。当初、V8横置きのテストカーでしたが、GMが新たに買収したロータリーエンジン技術を紹介するため、ビル・ミッチェルがスタイリングを担当。当時としては画期的だった風洞トンネルでの結果を全面的に押し出したデザインとされています。

 また、GMはそれまで2ローターエンジンのコンセプトカー(シボレー・ベガ)は作っていたものの、4ローターはエアロベットが初めての挑戦となりました。エンジンベイを透明なカバーで覆ったのは、これをアピールするためにほかなりません。もちろん、ガルウイングドアの採用もコルベットとしては初めてのスタイル。これには、イタリアのカロッツェリアも度肝を抜かれたことでしょう。

 4ローターエンジンは、約6.2リッターの4チャンバー付きで、およそ420馬力を発揮。車重はレイノルズ製アルミボディと相まって1180kgというライトウエイトクラスでしたから、パフォーマンスはずば抜けていたこと間違いありません。ちなみに、XP-897というべつのコルベット・コンセプトカーは2ローターが試されたものの、1990年代に売却されたあとにマツダの13Bを積んで復活を遂げています。

 この後、1976年までにエアロベットはいくつかの変更を加えられましたが、1980年から市販車として販売することが決定されていました。残念ながら、ロータリーエンジンは「コストがかかる」と、首脳陣が却下。それでも、6.6リッターのV8エンジンを縦置きミッドシップとするパッケージには、コルベットファンでなくとも夢をふくらませたはず。ですが、これまたオイルショックという自動車界にとって最悪なダメージに見舞われ、エアロベット計画は中止の憂き目に。

 GMが1968年に登場させたコルベットC3を1985年まで長期にわたって生産しつづけた裏では、オイルショックの影響もさることながら、エアロベット計画の中止が尾を引いたに違いありません。ところで、デロリアンは1973年にGMを退職しており、DMCデロリアンは「隠れたエアロベット生産モデル」といったら邪推と叱られてしまうでしょうか。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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