この記事をまとめると
■中国のふたつの国家的イベントでは紅旗ブランド車が公式車両となっていた
■日本では政治色の強い国家的イベントへの車両提供というものはあまり聞かない
■中国では国家的イベントで中国車が活躍すると中国車全般の販促に大いに効果がある
国家的イベントに紅旗が車両を提供
8月末から9月上旬にかけて、中国ではふたつの国家的イベントが開催された。天津市で8月31日から9月1日の会期にて開催された「上海協力機構(SCO)首脳会議」と、9月3日に北京市で開催された「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年を記念する大々的な軍事パレード(以下軍事パレード)」がそれである。
SCOは上海協力機構とはいうものの、上海で設立されたので上海協力機構としているだけで、もちろん中国・中央政府が仕切り役を担っている。ロシア、インド、パキスタンほか中央アジア諸国など10か国が加盟し、政治や経済、安全保障など広く話し合う組織となっている。中国とインドが加盟していることもあり、加盟国だけで世界人口の半分近くを占め、GDP(国内総生産)も世界の2割以上を占めるとの報道もある。
上海協力機構(SCO)首脳会議の記念撮影画像はこちら
軍事パレードは文字どおり、戦勝80周年を迎えて開催されたもので、インドのモディ首相ほか、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩総書記をはじめ、世界26か国の首脳が出席して天安門前の大通り(長安街)で盛大に行われた。
このふたつの国家的イベントでは、中国一汽(FAW)の紅旗ブランド車が公式車両となっていた。紅旗(HONGQI/ホンチー)ブランドは1958年に設立された中国国産ブランドとなる。中国VIP車両ブランドとしていまもなお、習近平国家主席専用車をはじめ、中国共産党や中国政府幹部向け車両で有名なブランドとなるが、ここ最近は広く民生用(民間向け)ともいっていい紅旗ブランドを冠する多数の普及モデルもラインアップしている。
現地報道では、SCOにおいて海外からSCOのために訪れた各国招待客接待車両として紅旗ブランド車が公式指定されていたとのことであった。指定された車両をみると、2020年に中国国内で発表・発売された「H9」という大型サルーンと、2022年にデビューした「HQ9」という大型ミニバン、そして、「国悦」という高級マイクロバスの3車種が指定されていた。
紅旗H9のフロントスタイリング画像はこちら
H9にはロングホイールベース仕様も用意されるが、標準仕様でも全長5mを超える大型サルーンとなり、搭載エンジンは2リッター4気筒ターボあるいは、3リッターV6を搭載している。HQ9は全長5mを超える大型ミニバンであり、2リッター直4マイルドハイブリッドエンジンを搭載している。
国悦は全長約7.3mのマイクロバスとなり、2リッターもしくは3リッターのターボエンジンを搭載している。中国車でありながらBEV(バッテリー電気自動車)ではなく、ICE(内燃機関)車のみが指定されていることには結構驚かされたが、あえてICE車にしたことで、「BEVだけではないぞ」と中国車の底力を見せたのかもしれない。
紅旗・国悦のフロントスタイリング画像はこちら
軍事パレードでも、紅旗のH9、HQ9、国悦は海外からの招待客接待用車両として指定されている。日本でも「東京2020オリンピック・パラリンピック」では、トヨタが大会公式車両として自社車両の提供を行ったのはまだまだ記憶の新しいところ。
ただ、今回の中国のような政治色の強い国家的イベントへの車両提供というものはあまり聞かない。日本より庶民生活と政治の距離が近い中国では、政治色の強い弱いにかかわらず、中国メーカーは公式指定車両になったことを声高に叫ぶ傾向が目立っている。