もう「ドライバーイジメ」は許されない! 流通業界の闇に踏み込んだ「トラック新法」の中身 (2/2ページ)

労働者の処遇改善による人手不足解消が狙い

2)運送委託次数の制限(2次請けまで)

 2024年問題では、荷主と運送事業者の多重下請け構造も問題となっていた。トラック新法ではこの多重下請けによる「中抜き」の現状にもメスを入れ、運送の委託は原則2次請けまでというルールが課せられることとなった。

 国(国土交通省)は荷主と運送事業者に対し、再委託の実態や回数について報告を求めることができるようになり、その違反や不適切な委託があった業者は、行政指導・勧告・企業名の公表といったペナルティを受けることとなった。国はその適正な取引構造の確立させるため、実態把握を監視体制を強化させるという。

4)無許可事業者(白トラなど)への運送委託の禁止強化

 トラック新法では、営業ナンバー、通称緑ナンバーを取得していない白ナンバーのトラック「白トラ」への運送委託の禁止も強化される。白トラは会社や個人が自分の荷物を運ぶために使うことが前提となっており、営利目的で他社の荷物を運ぶことは禁止されている。白トラ自体は違法ではないが、白トラで運輸業を営むのは違法行為になるのだ。

 だが、ひとり親方で白ナンバーで運送業を営む違法ドライバーは多く、荷主も運賃の安さなどから業務を委託していた。その行為に対する罰則がこれまではなく、いわば無法状態となっていた。

 トラック新法では、この白トラへの運送委託を罰則の対象とし、違反した荷主には国交省が是正命令・勧告・企業名の公表というペナルティを課すことができることとなった。荷主は取引先の運送業者が営業許可、緑ナンバーをもっているかを確認する責任が発生することとなった。新法の公布により、警察や国交省による白トラの取り締まりも活発になっているという話も、現場のトラックドライバーからよく聞くようになった。

5)労働者への適切な処遇の確保

 トラック新法では、労働者への処遇改善、ドライバーの処遇確保が運送事業者の法的な義務となり、適正な給与体系や人事評価制度、教育訓練の整備が課せられることとなった。改正前もドライバーの賃金や労働時間の基準はあるにはあったが、待遇改善は努力義務にとどまっていた。

 新法では労働者の処遇改善はトラック運送事業者だけでなく、利用運送(元請け)にも課せられることとなり、処遇改善の状況は許可更新時の審査項目に組み込まれ、改善が進まない事業者は許可更新が認められないことになるという。

 荷主と運送事業者との関係や運賃、労働者の処遇など流通業界の改善へ向け大きく踏み込んだトラック新法、この法律の施行と行政と業界の体制強化により、物流の2024年問題の解決へ向け大きく前進することを期待したい。


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