フェラーリオーナーたちを虜にする巧みなイメージ戦略
そしてここ最近のフェラーリが、カスタマーの興味を引き付けて止まないのは、そのニューモデル戦略の巧みさだ。2024年の決算報告の場で、フェラーリは2025年には6台のニューモデルをデビューさせると公言しているが、このうちすでにこれまでのローマに代わる「アマルフィ」と、SF90ストラダーレの後継車となる「849テスタロッサ」、そして296GTBのハイパフォーマンス仕様「286GTBスペチアーレ」は発表済み。さらに10月6日にはフェラーリ初のBEVがデビューすることも確認されている。
残りの2台に関する情報は現在の段階では伝わっていないが、これまでの例から考えるのならば、アマルフィのオープンモデルあたりが有力な候補。バリューカスタマーのなかでは、ICONAシリーズのニューモデル「SP4」への期待感も高まっているかもしれない。
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現在多くのスーパーカーメーカーに見られるビジネスモデルは、そのすべてがフェラーリのそれにヒントを得たものであるといってもよい。その象徴的な例といえるのが、多くのプロダクトをそれぞれ少ない数で生産するという基本的なスタンス。
フェラーリにはさらにスペチアーレやICONAといった生産台数を厳密に限定し、あらかじめ自身が選択したバリューカスタマーのなかから、その購入者を決定するというモデルも存在するし、究極的な限定車となるのはいわゆるワンオフである。フェラーリにワンオフの製作をオーダーすること、それがカスタマーにとって最大の栄誉であることは確かなところだ。ビスポーク部門のアトリエフェラーリや、クラシックカー部門のフェラーリクラシケもまた他社に大きな影響を与えた。
ビスポーク部門の「アトリエフェラーリ」が手掛けたワンオフモデル「SP48 Unica」画像はこちら
なぜフェラーリはここまでカスタマーやファンの心を熱く刺激するのだろうか。技術的な先進性、機能と美しさが両立されたデザイン、そしてそれが可能にする圧倒的な運動性能。理由をあげれば終わりはないが、結局のところ、それはフェラーリが約80年にわたって築いてきた、ライバルの追従を許さない唯一無二ともいえるブランドバリューという言葉にすべてが集約できるのではないかと思う。あえて付け加えるのならば、フェラーリの商品を手に入れることの難しさもまた、そのバリューをより高めるための一因となっているともいえる。
フェラーリの価値を高める要因となる、上級顧客が開発ドライバーになれる「XXプログラム」画像はこちら
フェラーリによれば、昨2024年の販売台数は1万3752台。これは対前年比でわずか89台のプラスという数字。この水準はおそらくこれからも大きく変わることはないだろう。そしてフェラーリというブランドは、さらに特別な存在であり続ける。