コンプラなんてない昭和の自由が羨ましい……は半分正解で不正解! ドラレコも監視カメラもないから「クルマのトラブル」も想像を絶する悪質っぷりだった (2/2ページ)

当たり屋もあちこちに

 ヒヤリといえば、あるデパートの地下駐車場から自動精算機のある出口に並んだときのこと。バーの前には先着のメルセデス・ベンツが止まっていて、筆者はその後ろに行儀よく並んだのです。で、前方に目を凝らすと、左ハンドルゆえに右側の精算機にマジックハンドでもって駐車券だか、お札だかを入れようとしているわけです。昔は左側に精算機がついている駐車場はいまより少なかったので、「ははぁ、ご苦労なさっている」と同情まじりの筆者。

 ところが、前のドライバーがもそもそやっている間、コツンと小さな衝撃を感じました。その出口は急な上り坂になっていたので、ブレーキから足が離れでもしたのか、ベンツが下がってきていたのです。すると、マジックハンドをもったドライバーがこちらを振り向き、会釈でもするのかと思いきや、おもむろにクルマを降りてきたのでした。

 最初に自分のクルマのリヤバンパーと、筆者のフロントバンパー双方に目を凝らす姿に邪気は見られませんでした。むしろ「やっちゃったぁ」的な苦笑いさえ浮かんで見えたもの。そのときには、いくらか車間をあけていて、こちらも「あれくらいなら、まあいいか」くらいの構えでいたのですが、ベンツのドライバーが発した言葉に唖然としました。

 歪んだ笑みを浮かべながら「いいよ、いいよ、新しいのもってきてくれたら」と、ヤナセのキーホルダーごとベンツのキーを手渡してきたのです。その後のゴタゴタは省きますが、ヤツは名うての当たり屋というか詐欺師だったことがわかり、取り立てて被害はなかったものの、いまでも釈然としていません。当たり屋の手口も巧妙化しており、なかには天才的な悪知恵を発揮する者もいるようですので、令和のいまとなっても用心するに越したことはありません。

 こうして思い返してみると、石川五右衛門の昔から、「浜の真砂は尽きるとも」クルマにまつわるトラブルや悪いやつというのは、一向に減らないのは世の摂理かと。コンプライアンスや監視カメラに頼ることなく、用心しなくてはならないのは昭和も令和も関係ないのです。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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