積載量ギリギリの軽バンは減速しない
ただし、これは発進直後に限ってのことで、赤信号からのスタートではかなりアクセルを踏み込まないと、後続車両にガンガン距離を詰められてしまうという状況だ。そして、上り坂と加速時なかなか速度が上がらないのでアクセルが全開に近くなる。もちろんエンジンは唸りをあげていたが、やはり350kgは重いのだ。
その後、けっこう急な上り坂も走行したが、加速こそしないがぐいぐいと登っていく力強さはあった。さすが国産車の技術と感心したのもつかの間、下り坂で最大積載量の威力を見せつけられることになった。
ガソリン満タンで350kgの荷物を積んだまま、いつもの感覚で下り坂のカーブに差しかかったときだ。ブレーキの最初のひと踏みでまったく減速しないことに慌てふためく筆者。そして、パニックブレーキにより崩れ落ちる背後の荷物。さらに追記しておくと、予想以上に減速しない状態でハンドルを切ったが、これまた予想以上に曲がらないことも身をもって知ることができた。もしも、雨が降って路面が濡れていたとしたら、高確率でガードレールに刺さっていたと思う。
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さて、下りで荷物の重さの威力を知った筆者だったが、もうひとつの落とし穴にもハマったので紹介していこう。
急こう配の狭い上り坂の途中にある目的地に運転席側から入ったときのことだ。配達を終えて、バックで敷地から出たあと、ハンドルを切りながら上り坂方面に発進しようとしたところ、クリッパーはまったく動かなかった。そう、目いっぱい切ったステアリングが抵抗になったことと、後部の300kg近い荷物のせいで、アクセルを踏んでもエンジン回転数さえ上がらない。ただエンジンがブーンという音を立てるだけ。
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さすがにこの状況は想定していなかったので、そのままバックで狭い道を後退してことなきを得たが、もしあの道が登り方面しか行けない一方通行でなかったことに胸をなでおろした。
出発前に最大積載量ギリギリの軽バンは加速しないだろうと予想していたが、それよりも減速しないことが未知の体験だった。そして、急坂での発進停車の注意点も新しい発見といえる。普通ではなかなか350kgを積んで走る機会はないだろうが、もしそうなった場合はより気を使って運転してもらいたいものだ。
余談だが、荷物を積みこむ筆者の姿を見て、この道40年という超ベテランのトラックドライバーがポツリとこんな話してくれた。
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「俺が若いころ、軽トラに1トン積んで夜中の高速を走ったことがあるが、あれは怖かったな。走らねぇし、止まらねぇし。でもその軽トラは壊れなかったよ」
もちろんこれは大昔の思い出だ。