【試乗】三菱アウトランダーPHEVは「高級車なみの快適性」と「圧倒的な悪路走破性」に加えて「災害時も安心」ってもう無敵じゃない? 乗るたびにSUVの完成型であることを実感!! (1/2ページ)

リヤモーターの強化とバッテリー容量アップで魅力倍増

 前後アクスルに個別の駆動モーターを配する2モーター方式4WDのSUVとしてアウトランダーPHEVは2013年に登場した。ボクはその画期的な駆動システムとプラグインハイブリッド(PHEV)方式を組み合わせたパッケージングに対し、デビュー当時「自動車界のノーベル賞」と高い評価を与えていた。いま、多くの競合が似たようなシステムを採用して登場しているが、アウトランダーPHEVのシステムには一日の長がある。

 サーキットやラリーシーンで圧倒的な性能を誇ったランサー・エボリューション。パリダカ(パリ・ダカールラリー)など悪路で大活躍したパジェロ。その両ブランドが築いた4輪駆動技術の根幹は、いまもアウトランダーPHEVのなかに引き継がれているのだ。また、世界で初めて量産EVとなったi-MiEV。そのモーター駆動制御も大きな礎となっている。

三菱アウトランダーPHEVのリヤスタイリング

 SUV市場はいま、群雄割拠の時代を迎えている。トヨタRAV4、マツダCX-5、スバル・フォレスターといった主力モデルが揃って刷新され、白熱した市場競争が展開されている。そのなかで、三菱自動車の新型「アウトランダーPHEV」は、世界レベルでPHEV販売のリーダーであり、累計10万台以上の実績を誇るパイオニアだ。

 最新モデルではこれまでに磨き上げた性能に加え、装備や安全性などの魅力も増している。

三菱アウトランダーPHEVのエンブレム

 強力な走りを支えるパワートレインは、後輪モーターの出力特性が最高出力80kW/最大トルク195Nmだったものが、24モデルからは最高出力100kW/最大トルク195Nmに強化され、前輪用モーター(85kW/255Nm)や2.4リッターガソリンエンジンとの協調制御により、合計で220kW(300馬力)以上のシステム出力を実現する。

 これにより、発進から中速域にかけてのトラクション性能が飛躍的に向上。旋回時には後輪駆動寄りの制御となり、FR車のような軽快なハンドリングを実現している。

三菱アウトランダーPHEVのエンジンルーム

 さらに、駆動用リチウムイオンバッテリーは22.7kWhと大容量で、EV走行航続距離は102km(WLTCモード)に達している。日常的な通勤や買い物はほぼEV走行でまかなえるようになった。エンジンが始動するのは長距離ドライブや急加速時などスロットル開度の大きな場面に限られ、静粛性とゼロエミッション走行の比率はクラス最大級に高まっている。PHEV方式の「いいとこ取り」は、大きく深化してきているわけだ。

 一方で興味深いのがエンジンフードに見える素材探求だ。軽量化を狙いアルミ製を採用していた以前のモデルから、最新型ではスチール製へと切り替えられている。それによる重量増はわずかだが、クラッシュ時の変形制御や歩行者保護性能を重視。また、欧州市場で高速域のエンジンフード振動抑制を考慮した結果の選択で、質感も高まったと実感できる。操縦安定性面で確かめると、フロントの接地感が増し、あらゆる走行域での質感が向上しているのは明確だ。

三菱アウトランダーPHEVのエンジンフード

 走りの根幹を支えるのは、いうまでもなく三菱独自のS-AWC(Super All Wheel Control)である。これはランサー・エボリューションで培われた電子制御4WD技術を最適化したもので、加速・減速・旋回すべての局面で車両運動特性をコントロールし、意のままに操れる「曲がる4輪駆動」を実現している。

三菱アウトランダーPHEVのコーナリングシーン

 印象的なのは旋回性能だ。フロントの切り込みに合わせて後輪が積極的に駆動トルクを配分し、車体を内側へ引き込む。四つ足で走るチーターのように「4輪で曲がる」感覚が得られ、ドライバーの意図に忠実に反応してくれる。SUVでありながらスポーツセダンに近いコーナリングフィールが味わえるのは、このS-AWCがあってのことだ。


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中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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