ディーラーの数が少ないから……が理由じゃない!? クルマの完成度はどれもこれも素晴らしいのにドイツ車ほどフランス車が売れない理由を真剣に考えてみた (2/2ページ)

文化の違いも販売が伸び悩む一因

 また、デザイン面だけでなく諸性能の部分においても、日本人とフランス人の自動車愛好家はなかなかわかり合えない。

 彼ら(フランスの人々)は「小さくて地味なスペックのパワーユニットだけど、オートルート(高速道路)を走らせるとめっちゃ速い(それゆえ税金が安く、結果として経済的である)」的なクルマを好むようだが、日本人は──もちろん全員ではないものの、どちらかといえばドイツ的な「わかりやすく明確なハイスペック」を好み、ありがたがる。「1.6リッターのフツーのSOHCだけど、その気になればめっちゃ速く走れるんです!」とフランス人にいわれても、「へー、そうですか」と気のない返事をしながら、ハイスペックでハイメカなターボエンジンなどを物色するのである。

 もちろんここまでに挙げたデザインやスペックについてのもろもろの違いは、近年ではそれほど明確ではなくなってきている。フランス車といえどもEUならびに世界を相手に商売をしている以上、デザインや作りというのはどうしたって汎グローバル的になっていくし、事実いま、すでにそうなっている。

 だが人々の奥底にある国民性のようなものは、そう簡単になくなったり薄まったりはしないものだ。そのため、いまでもやっぱりフランス車は「過去のフランス車」に近い部分があり、そこが、日本人の多くに敬遠される要因となっているのだ。もちろん「ディーラーの数が少ないから」などのビジネスライクな理由もあるにはあるが、フランス車が日本では売れない根本的な理由は、コレである。

 とはいえ、これはもうどうしようもない話であり、ドイツ車が日本でバカ売れしているのも「たまたまクルマに関しては、日本人とドイツ人のセンスは近かった」というだけの話である。メルセデス・ベンツやBMWなど、ドイツのクルマは日本で非常によく売れるが、ドイツのポップミュージックは、日本ではぜんぜん売れない。いやまったく売れないわけではないが、日本におけるフランス車と同様に「一部にマニアはいる」というニュアンスにとどまる。

 そして、ドイツのポップミュージック界がいまさらベストヒットUSA的なノリを目指すのもどうかと思うのと同様に、フランスの各自動車メーカーが、メルセデス・ベンツかBMWと見間違えそうなクルマを作るのも、かなりどうかと思う。

 それゆえフランス車各位には、今後も日本で地味めなセールスを継続していただき、たまにルノー・カングーのようなスマッシュヒットを生み出すことで経営を安定させ、細く長く、日本市場で頑張っていただければ──と思うほかないのである。


この記事の画像ギャラリー

伊達軍曹 DATE GUNSO

自動車ライター

愛車
スバル・レヴォーグ STI Sport EX
趣味
絵画制作
好きな有名人
町田 康

新着情報