未来予知の能力でもあんのか!? コンセプトカー「F100」をみたらメルセデス・ベンツの先読みっぷりに驚いた

この記事をまとめると

■1991年発表の F100は次世代技術を多数採用した革新的なコンセプトカー

■ASV構想と共通する安全技術群は自動車の進化を方向づけた存在となったといえる

■メルセデスの「最善か無か」の哲学が示す究極の実用車の理想形となる1台だ

30年以上前に現代のADASに通じる技術を実現

 メルセデス・ベンツF100は、1991年に発表されたコンセプトカーだ。そこに装備された次世代技術は、1990年代から2000年代初頭にかけて、市販車へ適用されている。

 当時次世代とされた装備の数々は、次のとおりである。

・キセノンヘッドライト
・レインセンサー
・音声認識
・ワイヤレスキーシステム
・アクティブクルーズコントロール
・タイヤ空気圧監視システム
・太陽光発電パネルの屋根
・衝突回避システム
・アクティブブランドスポット
・アクティブレーンキープアシスト

 これらのほとんどが、今日のクルマに装備されている。しかも軽自動車に採用されている装備もあるほどだ。そのなかで、キセノンヘッドライトは、いまではLEDに置き換えられるようになった。それでも当時は、電球を使ったヘッドライトに比べ、ガス放電式のキセノンヘッドライトは、より明るく前方を照らすことができた。

 日本では、1991年に国土交通省をはじめ、自動車メーカーや大学などがともに開発を進める先進安全車(ASV)の取り組みがはじめられている。ASVに含まれる次世代技術の内容は、F100の装備と共通性がある。

 とはいえ、日本が取り組みをはじめようとするとき、メルセデス・ベンツは先んじてクルマの行く末を考えはじめ、技術をもって課題解決に取り組む姿勢をF100で見せたといえる。その後ろ盾があればこそ、日本も、産官学一体の取り組みが本格化したといえるのではないか。

 メルセデス・ベンツは、承知のとおり、1886年にドイツのカール・ベンツが世界で初めてガソリンエンジン自動車を発明したことを祖とする。したがって、そのクルマづくりは、常に先駆者としての誇りと意思が込められている。

 メルセデス・ベンツの企業哲学は「最善か無か」の言葉に込められている。すなわち、最良の技術やクルマでなければ、ないに等しいという意味だ。ほかに比べてよいかどうか、以前のクルマに比べて進歩したかどうかではなく、原理原則に従い、本質を極める精神である。

 それを実現するための要素や装備が、F100で具体化されたことになる。

 そのうえでメルセデス・ベンツが追求するクルマの姿は、「究極の実用車」だ。それは、セダンとか、スポーツカーとかという車種を問わず、誰にとっても運転しやすく、安全に、快適に走れるクルマであること。

 乗用車でいえば、スマートやAクラスから、Sクラスやマイバッハに至るまで、どの車種も運転しやすいことを求めている。その姿勢は、AMGのGTであっても変わらない。

 F100はもとより、メルセデス・ベンツが未来を示唆するコンセプトカーを世に問うとき、時代において最善であり、究極の実用車であることを目指した機能や技術として研究・開発されるはずだ。


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御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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乗馬、読書
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