この記事をまとめると
■2025年に新設された全日本ダートトライアル「D1クラス」は2WDの改造車カテゴリー
■個性派車両が参戦しており軽量化やエンジン改造で独自の進化を遂げている
■初代シリーズチャンピオンはEJ20搭載MR-Sを駆るパッション崎山選手となった
クラス新設1年目にして多彩なマシンが熾烈な戦いを繰り広げる
ダートトライアル競技の最高シリーズ、全日本ダートトライアル選手権では、2025年のシーズンに合わせて「D1クラス」を新設。同クラスはいわば二輪駆動車のアンリミテッドクラスで、スバルのボクサーエンジン、EJ20を搭載したトヨタMR-Sや世界で唯一(?)となるFFのスバルBRZ、筑波のタイムアタック仕様車をD1仕様車に仕上げたスズキ・スイフトなど、さまざまな「魔改造モデル」が開幕戦のいなべ大会より参戦しているが、それ以外にもバラエティに富んだマシンが活躍している。
事実、10月11〜12日に広島県のテクニックステージタカタで開催された第8戦「ダートトライアルinタカタ」でも、モータースポーツイメージの少ないマシンが迫力ある走りを披露していた。
なかでもひときわ素晴らしいサウンドを響かせていたのが、「YHセラメタμnagi FTO」の山下貴史選手にほかならない。同モデルは文字どおり、2リッターのV型6気筒エンジンを搭載する三菱FTOをベースに開発したマシンで、「僕は三菱の社員なのでミラージュから乗り換えるときにFTOを選びました。最初はナンバー付きの競技車両として開発して、そのあとはナンバーなしのSCクラス仕様としていました」と山下選手。
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2025年からD1クラスができたことで、ヘッドライトを外してカバーだけの状態にしたほか、フェンダーを変更することにより約20kgの軽量化を実施したようだ。
エンジンの排気量アップは2100ccに抑えられており、最大出力も220馬力前後だが、車両重量は1010kg前後で、「メーターまわりは純正にこだわりたいんですけどね、もう少し頑張れば、1000kgを切ることができると思います」と山下選手は語る。
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マシンのお気に入りのポイントは、「V6サウンドと低速トルク」で「NAエンジンの割には低速トルクがあるので、いなべのようにターンがあるところは速いと思います。逆に砂川とか丸和とか、切谷内などハイスピードや上り坂のあるところは厳しいですね」と語るものの、山下選手は第8戦のタカタで躍進し、3位で表彰台を獲得した。
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また、松田宏毅選手が今季より投入している「安全コンサルDLWM猫アクセラ」もモータースポーツイメージの薄いアクセラをベースにしたマシンで、「もともとシビックでSC1クラスに参戦していたんですけど、D1クラスになると最低重量の規定がなくなって軽量化ができるので、それならターボ車両が有利になりますよね。シビックのようにNAエンジンでは厳しくなることから、ターボエンジン搭載のハイパワー車としてアクセラを選びました」と松田選手は語る。
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もともと同モデルはほかの選手がSC仕様で開発したもので、「私がアクセラを引き取ってからは燃料タンクをノーマルから競技用の安全タンクに変更して、それに合わせて隔壁を設置しました。ヘッドライトを外したのは軽量化というわけではなく、ぶつけてしまったので外したままにしました」と松田選手。
現状では、D1仕様に合わせたアップデートは行われていないようで、松田選手によれば「車両重量が1200kgぐらいなので、来年は軽量化をしたいんですけどね。やろうと思えば100kgは軽くできると思うけれど、プライベーターなのでまずはDIYで50kgの軽量化を実施したい」とのことだ。
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お気に入りのポイントとしては“直線番長”で、松田選手は「2300ccターボで最大出力は350馬力ぐらいあります。シビックは1800ccまでエンジン排気量を上げていたけれど、せいぜい205馬力ぐらいしかなかったので、アクセラは圧倒的にパワーが違います。2速はタイヤが空転してホイールスピンになってしまいますが、ストレートが速くて本当に“直線番長”といった仕上がりです」と松田選手。
残念ながら第8戦のタカタでは9位に終わったが、「シーズンオフの間にエンジンとミッションをオーバーホールして少しずつ要らないものを外して行きたいと思います。同時にクルマにも慣れていないので、しっかり練習したいですね」と語っているだけに、松田選手のアクセラも進化を続けていくことだろう。
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