保護の対象はクルマの乗員のみならず歩行者やライダーにも
交通事故は常に進行方向に衝突するだけでなく、後ろから衝突される場合もあるものです。そんな時のために、リヤガラス付近に内蔵され、後席の乗員の頭上から背面にかけて展開することで、天井やリヤガラスへの衝突から保護する「後突エアバッグ」もあります。これは、2008年に登場した全長3mを切るマイクロコンパクトカーのトヨタiQのために開発されたもので、後席とリヤガラスが近い距離となるコンパクトカーの安全性向上に大きく期待されたエアバッグでした。
トヨタiQに採用された後突エアバッグ画像はこちら
そして、交通事故の際に車内の乗員を守るだけでなく、衝突した歩行者を保護するための「歩行者保護エアバッグ」。これはボルボが世界で初めてV40シリーズに標準装備してから、一気に多くの車両への搭載が広がりました。歩行者と衝突した際に、ボンネットの上側からエアバッグが膨らみ、頭部などとフロントガラスの衝突を保護。
最近ではスバル・フォレスターが世界初となるサイクリスト対応歩行者保護エアバッグを搭載したことも話題です。自転車との衝突では、より高い位置に頭部が衝突しやすいことがわかっており、Aピラーの上部までカバーするようなエアバッグ形状となっています。
スバル・フォレスターに採用されたサイクリスト対応歩行者保護エアバッグ画像はこちら
さらに、最近ではバイク用のエアバッグも増えてきています。まず車体側に内蔵される二輪車用エアバッグとしては、ホンダが世界ではじめて、2006年に大型二輪のゴールドウイングに搭載。二輪車が衝突した際に、ライダーが前に投げ出されるのを食い止めるよう、前方から膨らんで身体を支えます。
また、ライダーが装着するタイプのエアバッグもあり、たとえばレーシングスーツのメーカーとして有名なHYODでは、バイクにケーブルやセンサーを取り付けなくてもわずか0.03秒で転倒リスクを検知し、路面に叩きつけられるよりも早くエアバッグが膨らむ技術を実現。
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二輪用エアバッグは鈴鹿サーキットとモビリティリゾートもてぎで55歳以上のライダーに着用義務化となったのをきっかけに、徐々に装着率が上がっているそうで、購入だけでなくサブスクでも利用できるとあって、ライダーたちに支持されつつあります。
ということで、交通事故死傷者ゼロというゴールに向かってさまざまな技術の進化が見て取れるエアバッグ。ですが、エアバッグだけで安全性が担保できるわけではなく、クルマではシートベルトの正しい着用、二輪車ではヘルメット装着が大前提となることをどうかお忘れなく。