まさかのルックスで機密扱い!? ブガッティ・ヴェイロンの「初期コンセプト」が「本気ですか?」感満点の見た目だった (2/2ページ)

なんとデザインしたのはVWデザイン責任者「ウォルター・デ・シルバ」

 いずれにしろ、長い間フォルクスワーゲンが秘密にしていたのも納得がいくほど奇妙でカッコ悪いデザイン(笑)。しかも、これはフォルクスワーゲングループ全体のデザイン責任者、ウォルター・デ・シルバによるデザインというから驚きです。1999年に製作されたとのことですから、ブガッティの権利を取得してすぐさまとりかかったタイミング。シルバの勇み足、と受け止められても仕方ありません。

 そもそも、シルバはアウディR8やランボルギーニ・ミウラ・コンセプトといったスポーティ、かつスタイリッシュなデザインが得意なはずですが、カエル顔のヴェイロン・コンセプトは同一人物の作品とは考えづらいもの。実際、フォルクスワーゲン首脳部もシルバ案をお蔵入りに決定したどころか、門外不出の機密扱いに指定。イタリアの専門誌が嗅ぎつけて、ようやく日の目を見たのが10年後の2009年だったとか。

 もっとも、シルバが描いたラインは市販仕様のヴェイロンに大きな影響を与えたことは確かでしょう。Bピラーが構築するシグネチャーCラインはヴェイロンだけでなく、シロンやトゥールビヨンにも受け継がれたほか、リヤエンドの要素は、エンジンカバーや大きな中央テールパイプなど市販ヴェイロンも似たようなニュアンスをもっています。

 これらシルバのエッセンスを、社内デザイナーのハルムート・ヴェルクスが汲み取ったのがコンセプト16/4と呼ばれる最終コンセプトモデル。ご存じのとおり、市販モデルにほど近いスタイルで、ライトやグリル、あるいはシグネイチャーCラインも大幅に変更され、誰もが安心するブガッティに仕上がりました。

 ところで、じつにひょうきんなブガッティを描いてしまったシルバですが、ピエヒの逆鱗に触れてクビ! ということにはならず、こののちにランボルギーニ・エゴイスタやフォルクスワーゲン・トゥーラン、セアト・タンゴなど支持の高いデザインワークを次々とこなしています。

 もしかしたら、フロッグアイはスランプ期だったのか、はたまた彼の芸術性に我々がついていけなかったのか、謎は深まるばかりです。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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