選手が最良のパフォーマンスを発揮すべく創意工夫を凝らしている
一方、全日本ラリー選手権には多くの日本人ドライバーが参戦していることから、日本語のペースノートを作成。コーナーの向きについては「み/ひ」と表記し、「みぎ/ひだり」とリーディングしているが、なかにはユニークな補助語を使用しているドライバーも少なくはない。
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たとえば59号車「SYE YARIS HEV」でJN-5クラスに参戦している清水和夫選手はレース経験が豊富なだけに、コ・ドライバーとしてコンビを組んでいる山本磨美選手は、清水選手のペースノートの特徴について「過去には同じコーナーが連続するようなところで、鈴鹿の“スプーン”といった言葉もありました。でも、ちょっとわかりづらいということで、最近は“コの字”を使用しています」と解説する。
さらに「今年のラリー飛鳥では、ゆるい右・左のコーナーを表す補助語として“レーンチェンジ”という言葉がありました。普通は“右3、左3”とか、特徴を付ける感じでもないんですけど、いきなりレッキ中にレーンチェンジといわれたのでびっくりしました」と付け加える。
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そのほか、42号車「ミツバWMDLマジカル冷機スイフト」でJN-4クラスに参戦していた高橋悟志選手のコ・ドライバー、箕作裕子選手もユニークなペースノートに出会ったことがあるようで、「全日本ラリーでコンビを組んでいる高橋選手は、きちんとしたペースノートなんですけど、うちの旦那(箕作有俊選手)の補助語は変わっていて、“ここからウネウネ”とか、“くねくね”とか、“この先うねってる”とか“こわい”とかをよく使います。クレストでも “こわいクレスト”と“行けるクレスト”の2段階で表現。普通は“コーション”といった言葉を使うんですけど、“こわい”といったほうが思い出すんでしょうね。逆にいえば、日本語がわかる人なら景色をイメージしやすいペースノートになっていると思います」と語る。
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ちなみに、2025年の全日本ラリー選手権でJN-1クラスのチャンピオンに輝いたヘイッキ・コバライネン選手は自身のペースノートについて、「日本のドライバーはコーナーの大きさを数字で表すけれど、僕は“スロー”や“ファースト”、“ミディアム”など言葉で表している。数字で表すのは距離だけ。これはフィンランドのスタイルで、向こうで学んだペースノートシステム」と解説。
さらに、WRCで活躍する勝田貴元選手によれば「マシンの絶対的なスピードが速くなると、コ・ドライバーのリーディングタイミングも、聞いているドライバーの処理もギリギリになってくるので、ペースノートの情報は可能な限り減らしたい。そのため、ワードを減らしたり、それまでふたつの言葉で表現していたものをひとつの言葉で表現したりと常に改善しています」とのことで、ペースノートも絶えず進化を続けているようだ。
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このようにペースノートの内容は千差万別であり、ドライバーによって異なるものだが、いずれにしても各ドライバーは、コ・ドライバーのリーディングに合わせて、ブラインドコーナーでも果敢なアタックを披露。ラリー・ジャパンのライブ中継でもインカー映像が流れるだけに、ペースノートのリーディングを聞きながら、トップドライバーのアクションをチェックしたいものだ。