SUBARUの未来は「パーフォマンス」と「アドベンチャー」の二刀流! エンジンもBEVも両立して走りの愉しさを追求!! 【ジャパンモビリティショー2025】 (2/2ページ)

BEVとICEの対立ではなく「共存」を狙うSUBARU

 Adventureシーンでは、SUBARUグローバルBEVラインアップ第2弾となるTrailseeker prototypeと、北米市場で実績のあるWildernessシリーズのプロトタイプが展示される。

 Trailseeker prototypeは、ソルテラの発展形としてEV化戦略の具体化を示すものである。このモデルは、BEVならではの緻密な制御による走行性能と、クロスオーバーユーティリティビークル(CUV)としての高い実用性を両立させている。SUBARUが追求する「非日常へのアクセス」という価値を、BEVという新しいプラットフォームで実現する試みである。

JMS2025に展示されたTrailseeker prototypeのフロントビュー

 BEVは瞬間的なトルク特性に優れており、AWDシステムと組み合わせることで、低μ路や悪路での走破性において、ICE車とは異なるアドバンテージを発揮する可能性がある。Trailseekerは、日常使いからアクティブなライフスタイルまでをサポートし、実用性と機能性を兼ね備えたグローバル戦略車として位置づけられている。

 Forester Wilderness prototypeおよびOutback Wilderness prototypeは、既存モデルのもつ正統派SUVとしての価値をベースに、タフネスと走破性をさらに強化したモデルである。専用のバンパー、拡大されたホイールアーチクラッディング、専用LEDフォグランプなどの装備は、ラギッドなキャラクターを強調していてアウトドアシーンにおける機能性の向上を果たしている。

Forester Wilderness prototypeのフロントスタイリング

 これは、従来の「生活四駆」のイメージを超え、本格的なアウトドア志向のユーザー層に強くアピールするための戦略的な派生モデルなのである。北米での成功を踏まえ、日本市場への導入が実現すれば、スバルファンのみならずアウトドア派ユーザーの多様なライフスタイルへの適合性を高め、ブランドの魅力を拡張することに寄与するのは間違いない。SUBARUのAWD技術が、より過酷な環境下でこそ真価を発揮するというメッセージを体現する展示である。

Outback Wilderness prototypeのフロントスタイリング

 今回のSUBARUブースの出展内容は、電動化という避けてはとおれない時代の流れに対し、極めて明確な「二元戦略」をもって臨んでいることが明確になっている。

 Performance-E STI conceptは、SUBARUが「安心と愉しさ」をBEVでどのように再構築するのかという、未来の技術的展望を示す試金石だ。一方、Performance-B STI conceptは、水平対向エンジンとシンメトリカルAWDというヘリテージの価値を、最新の技術でいかに高めるかという、ブランドの根幹への源となる回答である。この両極端なアプローチは、技術者集団としてのSUBARUの強さと、既存資産への自信を示している。

 また、「Performance」と「Adventure」というふたつのシーン設定は、走りの愉しさを求める層と、アクティブなライフスタイルを志向する層を明確にターゲティングした、極めて合理的な戦略に見える。

 TrailseekerとWildernessシリーズの展示により、グローバル市場での実績を日本市場にも展開し、実用的な電動化とSUV市場での個性を確立することが可能となるのだ。

 ブースに展示された1983年製のSUBARU GL Family Huckster(レオーネ ツーリングワゴン)は、現在のOutbackやForesterへと連なるSUBARUの歴史と、ワゴン/SUVカテゴリーにおけるパイオニア精神を象徴する。このヘリテージモデルと最新のコンセプトカーを並置する構成は、時代を超えて水平対向エンジンやシンメトリーレイアウトによるブランドの不変性を表現している。

 このように、ジャパンモビリティショー2025におけるSUBARUの展示は、電動化時代におけるブランドアイデンティティの再定義と、基幹技術の活用を両立させる、示唆に富んだものであったと評されるだろう。2台のSTIコンセプトが提示するBEVとICEの対立軸ではない「共存」の姿勢こそが、今後のSUBARUの市場戦略における最大の鍵となるはずだ。技術的な詳細、とくにPerformance-E STI conceptの駆動系制御技術の具体的な内容の公開と、実際に走る機会が切望されるところである。


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中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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