かつてガチで「セルシオ」「シーマ」に挑んだアメ車があった! サザンに青木功までCMに投入した「キャデラック・セビル」の本気っぷり (2/2ページ)

日本仕様まで用意する本気っぷり

 また、2代目セビル (1980-1985)から採用されていたFFパッケージですが、5代目セビルはついにアクティブサスペンション「スタビリトラック」が搭載され、矢のような直進性をはじめ、ヨーロッパ車並みの高速安定性を実現していました。

 もっとも、5mそこそこの全長、1.9mの全幅というサイズながら、最小回転半径は6.2mとほめられたものではありません。ちなみに、ロールスロイス・ゴーストが全長5.4mもありつつ最小回転半径は6.7mといいますから、小まわりが利かないレベルはロールスロイスにもひけをとらないということに(笑)。

 とはいえ、トヨタのセルシオや日産シーマといった当時の国産ラグジュアリーカーに対するライバル意識は非常に高く、アメ車としては珍しく右ハンドル化への対応レベルが段違い。すなわち、ペダルやシートの配置はもちろん、(居住性と視野確保のために)インパネを1インチ前にずらしたり、ワイパーとウインカーレバーも左右入れ替えて日本車と同じにしたりという徹底ぶり。ですが、コンソールの文字がカタカナになっていたのは、ちとやり過ぎな気もしないではありませんでしたけどね。

 そのほかにも、プレミアム仕様だった指定ガソリンが2000年モデルからレギュラーに変更されたり、標準装備のナビが完全日本語対応だったなど、セルシオ/シーマの対抗馬としては十分すぎる日本対応。とどめは新車価格で、発売当初はSTSが599万円、SLSは526万円と、ライバルたちに肉迫するもの。メルセデス・ベンツのSクラスに比べたらグレードにもよりますが、半額近いバーゲンプライスとくれば、食指が動くおじさんたちがたくさんいたのも納得です。

 さらには、前述のとおりサザンオールスターズの曲「胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ」をCMソングに選び、桑田佳祐が「キャデラックのある生活」とかなんとかいっちゃって、青木 功もフレッド・カプルスやリー・トレビノといった名ゴルファーとともにCMにブッキングという、いまでは考えられないような宣伝予算がかけられているのです。ともかくキャデラック・セビルはいい時代のいいクルマだったことは間違いないでしょう。

 それゆえなのか、最終世代のセビルは中古車市場でもレアな存在。鋳鉄でなくアルミブロックなのでオーバーヒートに弱いとか、ノーススターシステムに不具合があると高くつく、などなど悪評もあるこたあったわりに、タマが不足するほどの人気なわけです。

 基本はアメ車のセオリーどおり丈夫な作りなので、興味がある方は「見つけたら即買い!」が吉でしょう。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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