他に類を見ない没入感を実現
eMS SIM-01の最大の特徴となるのは、本物のレーシングカーを筐体として使用している点だが、その体験にさらなる情緒的価値を与えるべく、音と振動にもこだわりが注ぎ込まれている。ふたつのサブウーファーを備えた6.2chのサラウンドシステムと大型振動子を採用し、カーボンモノコックに音振を反響させることで、実際の走行さながらの感覚を再現しているという。
発表会には、スーパーフォーミュラやSUPER GTで活躍する小出 峻選手が登壇。eMS SIM-01について「いままで体験したレースシムのなかでいちばん没入感があります。やっているゲームが違うほどの感覚です。」とコメントした。実車さながらの音響のみならず、路面のアンジュレーションを拾ってマシンが振動する感覚までもが再現されていると語る。
eMS SIM-01について語る小出 峻選手画像はこちら
現役レーシングドライバーをしてリアルだといわしめるeMS SIM-01。筆者も少しばかり体験させてもらったが、素人目にもその体験は他のシム筐体とは一線を画すものだった。
まず、ドライビングポジションがまったく違う。身をよじるようにしてキャビンに身体を潜り込ませると、ペダルは想像よりもずっと奥まった部分にある。そこに足を合わせると、自然と前方に足を投げ出して、お尻は脚よりも低い位置に納まり、ほぼ仰向けに寝そべって上体のみ起こすような体勢に。まさにフォーミュラそのもののポジションとなる。本物のフォーミュラを使っているのだから当たり前といえば当たり前なのだが、受ける感覚はかなり変わってくる。
eMS SIM-01を体験する筆者画像はこちら
ポジションだけならば他社製のシムでも再現しているものはあるが、身体がすっぽりとキャビンに包まれているような感覚は、実際のモノコックを採用しているからこその唯一無二となるポイントだろう。
eMS SIM-01では、ゲームコンソール・ソフトについてはユーザーが自由に選択する形となっている。今回試供されたのは『グランツーリスモ7』。もはやeモータースポーツの世界では知らぬ者はいないであろう王道ソフトで、筆者もシム筐体含めてそれなりにプレイした経験がある。
だが、eMS SIM-01を用いたプレイ体験はもはや別物だった。キャビンに包まれているということが想像以上に大きなファクターで、視覚的にも聴覚的にも外界と遮断されているような感覚が強く、その没入感は筆舌に尽くし難いものがある。
eMS SIM-01を体験する筆者画像はこちら
音振のクオリティもこれまでにないもので、とくに振動には特筆すべきものがあった。小出選手も触れていたが、実車のスポーツ走行よろしく路面の起伏が常にお尻から伝わってくる感覚がある。恐らくこれはソフトで再生されるロードノイズをふたつの強力なサブウーファーで流し、モノコックを通じて振動として知覚させるという仕組みであると推察されるが、ステアリングインフォメーションと相まってかなり実車に近い感覚をもたらしてくれる。長いストレートでも常に気が抜けない感じ、とでもいえば伝わるだろうか。
数分のプレイ時間ではあったが、「やっているゲームが違うほどの感覚」と小出選手が述べるのも決してリップサービスではなく、プレイ環境だけで同じソフトがここまで変わるものかと驚かされた。まさしくメーカーの本気を垣間見た思いである。
販売については、世界限定10台となり、消費税を別としてちょうど1000万円のプライスタグが掲げられる。明言こそされなかったが、コンシューマー向けという立ち位置ではないようだ。なかなか一般人には手が届くものではないが、レンタルの展開も行うということなので、カーイベント等でプレイする機会があれば是非とも試してみていただきたい。