見た目はただのSクラスだけど「手榴弾」「毒ガス」だって耐え抜く! メルセデスの「S 680 ガード」がもはやスパイ映画のシロモノだった (2/2ページ)

万が一に備えて命を守るための値段は7000万円

 気密性といえば、ガス兵器が使用された際、室内にフレッシュエアを供給するエアタンクもトランク内に設置されています。さらに、エアタンクの隣りには消火剤のタンクも装備され、クルマに火炎瓶を投げられた、行く手に燃え盛るバリケードがある、なんて場面ではボタンひとつで消火剤を撒いてくれるのです。

 当然、車体の下面もばっちり強化されており、手りゅう弾どころか12.5kgの爆薬が爆発しても乗員の生存空間が確保されるとか。ちなみに、防爆性能を保つためにパノラマルーフは省かれ、オプションとしても用意されていません。

 また、ボディカラーはどんな色でも受け付けるといいますが、VIPやお忍びの王様みたいな利用者はこぞって目立たない黒を選ぶのだそうです。要は一般的なSクラスとしてカモフラージュされるから、ということでしょう。

 さて、ご想像のとおりこれだけの装備を加えると、車重はなんと4200kgにおよび、ノーマルSクラスの約2倍! 最高出力612馬力の6リッターV12ガソリンターボを搭載しながらも、最高速は190km/hまで。とはいえ、緊急時に多用するであろうリバースギヤでも60km/hをマークしてくれます。

 なお、タイヤは緊急走行用として内部にコアがある特別製となり、パンクしたとしても80km/hで30kmの走行が可能。構造的に、普段の乗り心地はさほどよくないかもしれませんね。

 そんなガードシリーズですが、メルセデス・ベンツのジンデルフィンゲン工場内の隔離された工場で手作りされています。およそ60人の職工さんが、1台のS 680 ガード を作るのに要するのは50日ほどだそう。それで価格は7000万円程度といいますから、命の値段としては安いものかと。

 もっとも、買えたとしても、いつなんどき襲われるかもしれないなんてドライブは御免ですけどね(笑)。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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