暫定税率廃止によるデメリット
前置きが長くなったが、ここで試算すると、いまのレギュラーガソリン価格の平均値は165.4円だが、これには補助金が使われているので、実際には175.4円と想定できる。ここから、暫定税率分の25.1円を差し引くと、150.3円と計算できる。補助金を使った現行から15円ほど安くなる。また、その分、消費税の支払額も減る。
そうなると、軽油の1リットルあたり145.7円との差が5円以下に縮まる。そもそもガソリンエンジンに比べて燃費がいいとされてきたディーゼルエンジンは、燃料の安さでも有利と考えられたが、その恩恵が減ることになりそうだ。
軽油を入れるイメージ画像はこちら
また、軽油は乗用車に乗らない人でもトラック輸送や公共交通機関としての路線バスなどで使われ、広く人々の暮らしにかかわりをもつため、ガソリンの暫定税率廃止だけでいいのかという論議があった。
そこで、軽油の暫定税率も、ガソリンから遅れて廃止される予定だ。軽油の税は軽油取引税という名である。軽油は、エンジンだけでなく、ほかの用途でも使われるため、ガソリンとは別の目的で創設された。
これにも暫定税率が課せられている。本則税率が1リットル当たり15.0円で、これに暫定税率として17.1円が上乗せされている。こちらは2026年4月をめどに廃止の予定で、仮にいまの販売価格から補助金を省き、そこから暫定税率分を差し引くと、138.6円と計算できる。こうなると、暫定税率を廃止するガソリンと軽油の価格差は、来春以降、11.7円に差が広がり、現状の19.7円よりは狭まるが、それなりの差は維持されることになるだろう。
軽油を入れるイメージ画像はこちら
暫定税率の廃止にあたっては、ガソリンも軽油も地方税としての税収分があるので、地域の財政に負の影響を及ぼすとの論がある。
しかし、それは話の論点がまったく違っている。
衣食住はもとより、人の移動や物流は暮らしの根幹であり、それに必要とされる燃料に、本則の税を徴収しながら暫定という名のもとに安易に増税を重ね、人や物の移動を制約してきたことをまず改善しなければならない。そのうえで、地方創成のため、地域の活性化策を地域の実情にあった姿で創造し、実現していくことが、地方の税収の増加につながるのではないか。
また、地方自治はそこで働く人の給与も税から支払われているのであり、自らの収入を増やす視点も加えながら、地域活性化に取り組むことが地方財源の確立につながることを知る必要がある。
田舎のイメージ画像はこちら
それとは別に、暫定税率の廃止によりエンジン車が復権し、環境悪化につながるのではないかとの論もあるだろう。
それは、個人や事業者の意識の問題であり、環境問題とは、一人ひとりが被害者であるとともに加害者であるとの認識をもち、一刻も早く電気自動車(EV)へ乗り換えを進めなければならない。また、物流においても、燃料確保を含めた脱二酸化炭素を実用化する策を一刻も早く確立しなければ、ブーメランのように自らに影響を及ぼし、暮らしもままならず、将来の見通しも立たない世のなかへ転落していくことになる。
トヨタbZ4X画像はこちら
暫定税率の廃止にあたっては、廃止の前にガソリンに対する補助金が段階的に増加されていく。11月13日から15円に増額され、27日に20円、来月11日には25.1円(暫定税率分相当額)になる。これは、暫定税率廃止の施行までの間、安くなるまでガソリンを買い控えることへの対策などが理由とされている。