2025年シーズンはチームとしてはほぼ完璧な年だった 予選は、Aドライバーの社員ドライバーである伊藤和広とBドライバー山内英輝の合算タイムで3分41秒049とグループ2の2番手タイムになりました。グループ2トップは6号車 新菱オートDXL☆ネオグローブEVO X、ハイパフォXの後ろには743号車Honda R&D Challenge FL5が並びます。
6号車のEVO Xは長年レースに参戦する古豪で、ドライバーもプロドライバーが並びますが、後方の743号車はホンダの社員や関係者の有志がクラブ活動で行っているもので、ホンダの社員が休日にメンテナンスやレース活動を行っているチームです。一方、こちらのチームもスバル の社員ドライバーが乗っていることもあり、そういった意味でも743号車とはライバル関係になります。
スバル High Performance X Future Conceptと743号車Honda R&D Challenge FL5 画像はこちら
4時間の決勝レースはトラブルもなく、大きなミスやペナルティもなく、淡々とゴールを目指しての走行となりました。トラブルなく走行……それはつまり、それだけ車両の信頼性がアップしているということであり、開発されたパーツがレースに活かされ、「速く」「確実に」走れるようになっている証明だと言えます。
すっかり日が落ちた夕闇のなか、ハイパフォXは無事チェッカーを受けて、総合19位、クラス2位となりました。ライバルのST-2クラスで走る、743号車Honda R&D Challenge FL5よりも上位でフィニッシュしています。
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ハイパフォXより上位は、すべてST-XやST-Zなどのレース専用車両のグループ1勢。ハイパフォXは開発車両といえど、量産車に近いマシンですので、今大会においては量産車でのトップを得たようなものと言っても過言ではないかもしれません。
レース終了後、Bドライバーを努める山内英輝選手は、「参戦回数がちょっと少なかったですけど、その期間があったからこそ大きなアップデートもできました。目標だったST-2クラスの前に出られたことがすごく良かったです。次の目標はST-TCRクラスになると思いますが、超えられるようになるとよいなと思ってます」と語ります。
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Cドライバーとしてチームをバックアップする井口卓人は、「富士24時間と菅生を走ったあと、オートポリス、岡山とスキップした期間にスバルのエンジニアのみんながいろいろとアイディアを練って取り入れてくれたことで、こうして結果につながったのだと思います。毎戦これくらいの大型アップデートは無理ですけど、少しづつでも性能向上を続けられるようになれば、もっともっと、びっくりするくらい進化すると思います。ドライバー同士で助けあい、エンジニア全員の頑張りがあって上のクラスに届くまでになったこの成功例が、次に繋がっていけばよいと思います」と、この1年の進化が実ったと語ってくれました。
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Aドライバーで社員ドライバーの伊藤和広は、「参戦回数は少なかったですけど、そんななかでも会社の意識が大きく変わった1年だったと思います。鈴鹿までは去年の延長みたいな感じでしたが、後半戦に向けて意識が変化していき、取り組み方も変わっていきました。そのなかで、何をどう進化させていくのか目標がはっきりしていき、開発も一段と進んだと思います。開発速度を上げるのが目標だったのですが、その目標も達成できたかと。同じく目標だった打倒ST-2クラスにも届きました。でもこれが終わりではなく、これからも次に向かって進んでいく必要があります。『シーズンオフはないよ』って自分にもみんなにも伝えて、来シーズンに挑みたいと思います」とエンジニア兼ドライバーらしいコメントをしてくれました。
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最後に伊藤 奨監督は、「今日のレースはみんなが力を出し切って、よい結果が得られたレースでした。今シーズンはトラブルもほとんど起こさずに終えられることもできましたね。やはり、レースは完走しないことには意味がありません。レースをスキップすることが多くて7戦中4戦しか出ていませんが、その過程ですごく進化できたと思います。それぞれの分野がクルマをしっかり進化させてくれたかと。今年の目標だったST-2クラスに勝つと言う目標は達成できましたしね。しかし、それでもまだまだ課題は多く残っています。なので、オフシーズンにひとつずつ検証などを行っていきたいと思います。来シーズンについてはまだ何も言えませんが、ここ数年はオートサロンでレースの体制発表などを行っているので、そのときに発表できればと思います」と今シーズンを総括しつつ語りました。
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関係者への取材を通してわかったのは、2025年シーズンを戦ったハイパフォXは当初の目標を達成したということ。そしてこのS耐で開発、研究された技術が、量産車に活かされるはずです。
例えばそのひとつとして先日、BRZ STI Sport タイプRAという限定車が発売されました。この車両はまさしくBRZでS耐に参戦していた時代に開発された技術が活かされた車両です。エンジニアは発売まで2年かかってしまったと言いますが、レース車両と量産車では耐久性や信頼性などの条件が大きく異なるため、簡単に量産車として発売するわけにはいきません。
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それでもレースの現場で得られた知見が、一般ユーザーも体験できる車両として発売されました。S耐で得た知見は、今後の車両開発に活かされていく……というのがまさに具現化された一例かと。
来シーズンの活動はどのようなものになるのか、伊藤監督の言うように、2026年の東京オートサロンで発表されるかもしれません。その発表をいまから楽しみに待ちたいと思います。