いまじゃモノコック全盛だけどかつてはパイプでフレームを作ってたのよ! 昔のレーシングカーでみられた「スペースフレーム」とは (2/2ページ)

スペースフレーム構造を採用したレーシングカーたち

 代表的なスペースフレーム構造のレーシングカーの一例としては、1954年にデビューしたメルセデス・ベンツW196を挙げておきたい。W196は、グランプリカーのW196Rと2シーターレーシングスポーツのW196Sの2タイプが作られ、W196Sのクーペタイプが300SLRの名で登場(非市販車)している。スペースフレームはアルミ合金製。車両の設計者は伝説のエンジニア、ルドルフ・ウーレンハウトである。余談だが、非常に価値の高いモデルで、2022年のオークションで135万ユーロ(当時の邦貨で182億円)の史上最高価格で取り引きされている。

 W196をスペースフレーム構造の一例として挙げたが、モーターレーシング史上でスペースフレーム構造を採用し長らく成功を続けたメーカーがある。チシタリア・グランプリの設計者、ポルシェが率いるポルシェ社だ。ポルシェは1966年発表の906、それに続く910、さらに907、908、そして917、最終的にはモノコックシャシー全盛となった時代のターボグループ6カー936(最終仕様は1981年)まで、15年間にわたってスペースフレーム構造のレーシングカーを作り続け、最強のレーシングプロトとしてタイトルを獲得してきた。

 ポルシェのスペースフレームは、906時代の鋼管スペースフレームに始まり、917の時代にはアルミ合金製、さらに軽量化を図ったマグネシウム合金製まで試した経緯がある。また、1970年、1971年のメイクス選手権テクニカルコース用に、大柄な917に代わって投入された908/03スパイダーのアルミ合金製スペースフレームは、徹底的して軽量化が図られた結果、単体重量は35kgまで絞り込まれていた。しかし、最後までスペースフレームで頑張ったポルシェも、1982年にスポーツカーレースがグループCカー規定に変更されると、ニューマシンの956でアルミモノコックに切り替えることになった。

 戦後成功を収めたスポーツカーメーカーとしてポルシェと双璧の存在となるフェラーリも、250P/250LM(1963年)の時代までスペースフレーム構造を採用。しかし、275P2/330P2(1965年)に発展する際、前後をスペースフレーム構造、キャビンをモノコック構造とするセミモノコック構造のシャシーに変更。以後512S/M、312PBの時代までこの構造が引き継がれることになる。

 軽量、高強度な中空パイプを立体的に組み上げて作られたスペースフレームは、振りかえれば、機能、性能から見て知恵の巧みさを感じさせる構造物だったが、造形物として眺めても幾何学的な美しさが印象に残る工業製品といえるものだ。


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