タイヤをテーマに学生とメーカーが本音で語り合える! フォミュラジムカーナにブリヂストンが協賛するなるほど事情 (2/2ページ)

自動車部OBの社員が現役の学生を迎え入れる

ブースで飛び交うクルマ好き学生のガチ質問

 走り込んでいる学生は、「RE-71RSとほかのポテンザでコンパウンドの違いは?」「ジムカーナ向きの空気圧はどのあたりがいいですか?」というような質問を、いくつもぶつけてくる。ドライバー目線をもちながら技術の話もできるクルマ好き学生は、非常に貴重な存在だ。武田さんは、「こういう学生こそ、将来タイヤ開発やモータースポーツの現場で活躍するような人になってほしい」と語る。実際、フォーミュラジムカーナをきっかけにブリヂストンへ入社したという学生もいるそうだ。

 さらに印象的だったのは、自動車部OBの社員がブース内で自分の経験をもとに、「入社後のリアル」を包み隠さず話していたことだ。「学生だった自分が企業側になり、学生の就活を支える」という循環が生まれるのも、フォーミュラジムカーナの面白さだろう。

クルマ好きを積極的に採用する理由

 ブリヂストンHRX採用部部長の山中俊昭さんは、同社の採用方針の変化をこう説明する。

「以前はクルマ好きとそうでない人が半々だったんですが、社内でモータースポーツを盛り上げる方針が強まるなかで、いまはクルマ好きの学生を採用する数を増やす流れになっています。ですので、採用担当の社員がこのような現場に足を運ぶようになってきています」。

 フォーミュラジムカーナのように、競技やタイヤの話の流れで仕事に関する話をする。そうした自然な接点づくりが、いまの同社の採用方針と噛みあっているという。

 就活の環境について山中さんは、「情報が多すぎるし、どの企業もいいことしか言わないですよね。普通の就活では企業の真実に辿りつくのは難しいんです」と指摘した。自動車部OBの社員や内定者と直接話せるフォーミュラジムカーナは、学生や企業にとって貴重な場といえる。ここでの会話は、パンフレットや採用サイトには載らない本音であり、学生にとっては企業を見極める重要な判断材料になるはずだ。

あとからクルマ好きになる若者をリアルに感じられる

 フォーミュラジムカーナを通じてブリヂストンを知り、来春から同社に入社する予定の明治大学自動車部OBである渡辺さん(写真向かって右)は、この大会に出場する意義をこう語る。「走りの経験になるのはもちろん、先輩や企業の人たちとのつながりが一気に広がります」。

 また、渡辺さんの所属していた自動車部のなかには、入部の時点ではクルマにそれほど興味はなく、単に機械いじりが好きなだけの学生も多いという。だが、活動を続けるうちにクルマにどんどんハマっていき、気がつけば自分の愛車を手に入れ、タイヤ選びやセッティングにこだわるようになっていく。世のなかでは「若者のクルマ離れ」と言われる一方で、「あとからクルマ好きになる若者」が確実に存在するのだ。それを感じられるのも、フォーミュラジムカーナの現場ならではといえそうだ。

走る・学ぶ・働くを体感できる場所

 フォーミュラジムカーナはタイムと順位を競う場であると同時に、競技を通じて各メーカーの技術に魅せられた学生が、その技術を生み出す側にも興味を抱く。そんな物語が静かに進行している。

 ブリヂストンは、スーパーGTやスーパー耐久といったモータースポーツシーンも支えている。同社はそうした現場に学生を招待し、プロドライバーが走らせるマシンや、過酷な条件で使われるタイヤの姿を間近で見せる機会を増やしている。タイヤという商品だけでなく、モータースポーツ活動をセットで体験させることで、学生たちにもっとクルマに関連した仕事の選択肢を広げてもらおうというのが狙いだ。

「こういう活動をしているブリヂストンはいいな。将来ミニバンを買ったときにも、やっぱりブリヂストンを履かせたい」。

 武田さんは、学生の心にそんな感情が湧き上がってくれたら嬉しいと話す。そのためにも、「ブリヂストンってこんなものか」と思われないタイヤを作り続け、モータースポーツ活動にも本気で取り組み続けることが重要だと考えているとのこと。

 走る楽しさ、技術の奥深さ、仕事のリアル。それらを一度に味わえる場として、フォーミュラジムカーナはこれからも、クルマ好きの若者と企業をつなぐ場であり続けるはずだ。


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