なんでポルシェはRRに固執する? スバルがAWDを全面に打ち出すワケは? 駆動方式がアイデンティティな自動車メーカーが存在するワケ (1/2ページ)

この記事をまとめると

■駆動方式の選択は「技術の都合」から始まって「ブランドの象徴」になった

■RR/FF/AWDは成功体験が積み重なり変えにくい伝統として定着していく

■EVはレイアウト自由度が高く駆動方式の常識そのものを塗り替える可能性がある

各自動車メーカーがもつ伝統の駆動方式

 海外の自動車メーカーがよく使う言葉に「ヘリテイジ(Heritage)」がある。その英語の意味は、「遺産」や「伝統」が直訳で、「残すべきもの」と解釈することもできる。クルマの場合でいえば、ポルシェ911で伝統的に採用されているリヤエンジン・リヤドライブ(RR)方式や、フォルクスワーゲン(以下VW)・ゴルフに代表されるフロントエンジン・フロントドライブ(FF)があり、日本車ではホンダがシビックなどを主体にFFにこだわる新車開発を続けている。あるいは、スバルやアウディは、4輪駆動(4WDまたはAWD)を主力商品の特徴に位置づけている。

 ポルシェの場合は、そもそもフェルディナント・ポルシェ博士が第二次世界大戦の前から庶民のための小型車づくりに熱中し、VWタイプ1(ビートル)の原点となる構想を戦後までもち続けた。それを機に、ポルシェ356というライトウェイトスポーツカーが誕生し、911へとつながる。

 すでにアウトバーンがあったドイツでは、庶民のクルマといえども高速で走行する可能性があり、当時のバイアス構造のタイヤ性能からしても、駆動輪である後輪に荷重をかけ、より高いグリップを得るため後輪車軸の後ろにエンジンを搭載するRRが、当時の技術制約下では有利理想といえた。また、客室前にエンジンがないことと、エンジンが空冷であったことによって、空気の流れを乱しにくい車両前端部の薄い造形をつくりやすかった。それが、ポルシェの原点だ。

 現在では、タイヤもラジアル構造になり、扁平タイヤも生まれ、エンジンは水冷式になったが、911の姿は伝統的象徴でもあり、そこを変えるのは難しかったのだろう。それでも、ポルシェは944や928などFRのスポーツカーにも挑戦した。しかし、売れ行きがそれほどでもなかったのも、911でRRを続ける理由のひとつだろう。一方、それ以外のパナメーラや、カイエンなどSUVは、RRにこだわっていない。


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御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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乗馬、読書
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