バイ・ワイヤ化のメリットは数多い
では、技術的困難を乗り越えてステア・バイ・ワイヤを採用する利得にはどういったものがあるのだろうか。操作感の面では、操作に対する応答遅れの減少、フリクションの少なさ、キックバックの軽減などが挙げられる。小舵角でも大きな切れ角を得ることができるので、とくにタウンスピードではステアリングの操作量が少なくなり、ドライバーの負担軽減が狙える。
筆者も実際に新型RZのステア・バイ・ワイヤモデルを公道で試したが、交差点などでは90度程度の操舵で十分な切れ角が得られるために最初こそ戸惑ったものの、慣れてくると蓄積する肉体的疲労は減るだろうな、と感じられた。高速域では操舵量に対する切れ角が従来のステアリングと同等になってくるので、違和感は少ない。中速域でのコーナリングでは、レースゲームのステアリングコントローラーを思い出すような感覚で、意外なほどの扱いやすさだった。
ステア・バイ・ワイヤを搭載したレクサスRZ550e画像はこちら
新型RZには、従来のステアリングを採用したモデルも設定される。そちらのロック・トゥ・ロックは約1000度、回転数にして3回転強と、一般的かあるいは若干クイックな水準となる。一方のステア・バイ・ワイヤ採用モデルのそれは、約400度=1回転強。つまり左右それぞれ最大でも200度ほどしか切れないので、ステアリングをもち替える必要が生じることが基本的にはない。
ステア・バイ・ワイヤシステムとノーマルステアリングの比較画像はこちら
それゆえ、新型RZのステア・バイ・ワイヤ採用モデルには、従来の円形ではなくヨーク型(操縦桿型)のステアリングが採用されている。先進的なイメージを与えるこのヨーク型のステアリングは、乱雑にいえば円形ステアリングの上下部が大きくカットされた形状なので、ドライバーの脚部にステアリングが干渉しにくく、メーターの視認性や前方視界も向上するという副次的効果も生んでいる。
ステア・バイ・ワイヤを採用したレクサスRZのインテリア画像はこちら
そのほかにも、コクピットから車軸部にまたがって伸びるステアリングシャフトがなくなることで、車体前部の設計の自由度が高まるというメリットも見込まれる。いうまでもないが、自動運転技術とのシナジーも良好だ。
クルマから「ナマ」の感触がまたひとつ減る……とため息をつきたくなるクルマ好きもいるかもしれないが、ここはひとつステア・バイ・ワイヤの秘めた可能性に期待をもって見守りたいところだ。