警察に「ドラレコ映像」の提出を求められた! コレって渡すべき? 裁判時は証拠として有効? (2/2ページ)

裁判における「証拠能力」は極めて高い

 では、提出された映像は裁判でどれほどの力をもつのか。これについては裁判所が、交通事故の内容と直接関係があるか、不正な方法で取得されたものではないかという点をもとに判断するが、客観的証拠として採用されるケースが多い。かつてはデジタルデータであるがゆえに「改ざんの可能性がある」として慎重論もあったが、現在では性能向上とともに、日時や位置情報が正確に記録されている限り、有力な証拠として重視される傾向にある。

 もっとも、近年はデジタル証拠ならではの課題も指摘されている。昨今では急速なAI技術の進展によって偽造映像の作成が容易になった。しかし、これに対しても今後はメーカーによる電子署名やハッシュによる改ざん検出機能など、システム的に偽造防止策の導入が進むと考えられる。

 実際、事故時の過失割合の算定においては、ドラレコ映像が決定打となるケースが多い。たとえば、信号機のない交差点での出会い頭の事故で、相手が「自分は一時停止した」と主張していても、映像に一時停止せず突っ込んでくる姿が映っていれば、相手の主張は一瞬で覆る。人間の記憶は恐怖や混乱で容易に書き換えられるが、ドラレコは感情をもたず、ただ物理的な事実のみを記録しつづける。

 ただしこれも万能ではない。広角レンズ特有の距離感の歪みや、LED信号が点滅周期とフレームレートの関係で映らないことがある「信号消灯現象」など、映像ならではの落とし穴も存在する。そのため裁判では、単に映像を流すだけでなく、その映像解析をもとにした鑑定書がセットで提出されることも少なくない。

 なお、ドライブレコーダー映像にはプライバシーの問題も伴う点にも注意が必要だ。映像には歩行者の顔や車両ナンバー、周囲の住宅などが記録されることがあり、状況によっては個人情報に該当する可能性もある。とくに近年は、事故やトラブルの映像をSNSや動画サイトに投稿するケースが増えているが、無断公開はプライバシー侵害と判断されるリスクがある。証拠として警察や保険会社に提出する行為と、不特定多数に公開する行為はまったく別物であることを理解しておきたい。

 我々がもっとも注意しなければならないことは、提出するデータの扱い方だ。「事故の瞬間だけ見てもらえればいいだろう」という親切心のつもりで、前後の映像をカット(トリミング)したり、画質補正を行ったりしたデータを提出することは、絶対に避けるべきだ。

 たとえ悪意がなくても、加工されたデータは「原本との同一性」が損なわれたとみなされ、証拠としての価値(信用性)が著しく低下する 。相手方弁護士に「都合の悪い部分を削除したのではないか」「速度が出ていた部分をカットしたのではないか」と疑義を与えることになるからだ。裁判所が証拠として採用するのは、あくまで「なにも手を加えていない生のデータ(マスターファイル)」である。

 たとえSDカードの容量がいっぱいで、事故時の映像をPCにコピーしたとしても、警察や保険会社に提出する際は、もともとのSDカード自体を一切加工せずに渡すことが重要だ。切り取りや編集は「見やすくするため」という理由であっても、法廷という場では「改ざんの疑い」というノイズにしかならないことを肝に銘じておいてほしい。

 ドラレコは、正しく使えばあなたを守る最強の武器となるが、扱いを間違えれば疑いの目を向けられる原因にもなる。正確な映像が記録されたSDカードを提出するまで、冷静に対応したい。


この記事の画像ギャラリー

新着情報