【試乗】パワーもトルクも変更ないのにマイチェンで確実に速くなった! アルファロメオ・トナーレの切れ味鋭いハンドリングに心酔 (2/2ページ)

乗ればわかるトナーレの走りの進化

 けれど、本当の歓びは、走りはじめてから訪れる。今回からトナーレのパワートレインは、少なくともしばらくの間はマイルドハイブリッド(以下、MHEV)のみ、となった。つまり、フィアット・パワートレイン・テクノロジー製のファイアフライ系をベースに開発された可変ジオメトリーターボ付き1.5リッター直列4気筒と、48VのP2モーターを内蔵した7速デュアルクラッチ式トランスミッションの組み合わせ、だ。

 そこは従来のMHEVと変わらない。内燃エンジンで160馬力/5750rpmと240Nm/1700rpmを、モーターが20馬力と55Nmを発揮するという数値も、まったく変わらない。

 それでも、トナーレは間違いなく速くなってるのだ。加速も鋭くなってるように感じるし、速度の伸びもいい。力強さも増している。もとよりクラスがクラスなだけに馬鹿っ速というわけではないのだけど、スポーツ心が確実にくすぐられるぐらいには速いし、何よりもともとのトナーレのもち味であった走りの爽快さが一段階、いや、二段階ぐらい跳ね上がってるのだ。有り体にいうなら、走らせていて思わずニヤニヤしちゃうくらいに、めちゃめちゃ気もちがいい。でも、スペックとしては従来どおりのまま。……なぜだ?

 じつはこのパワートレインも、2025年の仕様変更の時点で手が加えられてたようで、やはりトナーレ・インテンサに試乗したときに「あれ? 何だか速いぞ」と感じたものだった。

 が、本国の資料を調べても欧州のメディアをチェックしまくっても、そこに関して何がどう変わったかなんてどこにも書かれてなかったし、ステランティス・ジャパンに訊ねても、知らせらしい知らせは本国から届いてないということだった。ステランティスのイタリア系ブランドは、昔からちょっと改良したぐらいではアナウンスなんかしないのが常。リリースしたモデルをていねいに育ててるのに、年次改良などで手を加えても、よっぽどのことでもないかぎりは騒いだりしない。

 それでもムキになって調べ続けてたら初期の頃のトナーレMHEVと較べて燃費に関するデータが微妙に異なってることを発見して、もしかして制御系に手が入ったのかも……という予測はできたのだけど、今回のお披露目のときにナゾがはっきりと解けた。ステランティス・ジャパンの担当者が本国に熱心に掛け合って、ざっくりだけど改良ポイントを聞き出してくれたのだ。

 可変バルブの可変タイミングの変更、トランスミッションの変速タイミングの調整、モーターの介入などハイブリッド系のコントロールの改良……とくれば、当然ながら制御系にも手が入ってるわけだ。結果、0-100km/h加速タイムが8.8秒から8.5秒へと、0.3秒も速くなっている。しかもパワーやトルクの出方の特性にも変化があるわけだから、体験的な違いはその数値以上。ちょっと前のトナーレに乗り慣れてる人なら間違いなく体感できるでしょ、というレベルなのだ。

 このクラスのSUVのなかで間違いなく断トツといえるシャープなハンドリングは、もちろん健在だ。新型はフロントのオーバーハングが10mm短くなっていて、前後のトレッドもそれぞれ左右4mmずつ、つまりは8mmずつ拡大されている。きっとそれらが効いてるのだろう。クルマが曲がりはじめてから抉り込むように旋回しようとする性格はほぼそのままながら、フロントタイヤがなぞるラインはより正確さを増して、同時に横方向の安定性も高まってように感じられる。微妙にマイルドになったというより、鋭さと安定性がこれまで以上に高いところでバランスしてる、というべきか。

 ドラマティックで鮮やかな曲がりっぷりは、相も変わらず強烈に刺激的で、ワインディングロードを攻め込むようにして走るのがクセになる。姉にあたるステルヴィオも妹にあたるジュニアも素晴らしいとは思うし何度も感激させられてきたけど、でも僕のなかではトナーレこそが当代随一のハンドリング系SUVだ。

 ルックス然り、加速パフォーマンス然り、ハンドリング然り。新しいトナーレはあらゆる部分が磨き抜かれてる。魅力がさらに増したとも思う。いま、活きのいい粋なSUVが欲しいと考えてるなら、新型トナーレは間違いなく抜群にマッチする候補になるだろう。

 価格は受注生産の「トナーレ・スプリント」が599万円、上級グレードの「トナーレ・ヴェローチェ」が653万円。満足度を考えたら、僕はバリュー・フォー・マネーを超えた価格設定だな、と思う。


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嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2026-2027日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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