この記事をまとめると
■日本ではBEVの印象が強い中国車だが海外市場に目を向けると事情は異なる
■東南アジアなどディーゼルやHEVが主力となる市場も多い
■地域ニーズに応じた柔軟な戦略こそ中国勢の強みとなっている
市場ごとに変わる現実的な選択
日本で中国車といえばBYDがメキメキと知名度をあげている。最近PHEVを新たに日本にも導入したものの、ラインアップのほとんどはBEVとなっている。中国国内ではBEVとPHEVを合わせたNEV(新エネルギー車)が新車販売全体の6割と高い割合になっているとの報道もある。日本では“中国車=BEV”といったイメージが強いのだが、東南アジア諸国では意外なほど純ICE(内燃機関車)車も各メーカーがラインアップしている。
たとえばインドネシアでのウーリン(上海通用五菱汽車)のウェブサイトを見ると、インドネシア国内では13車種がラインアップされているのだが、数えてみるとそのうち7車がICE車となっていた。
ウーリンのインドネシアでのラインアップ画像はこちら
一方BYDは、インドネシアでも純ICE車をラインアップしておらず、すべてBEVとなっている。GWM(長城汽車)は、インドネシアでは「タンク」、「オーラ」、「ハーバル」といったブランドを展開し、計7車種ラインアップしているが、BEVは1台のみ、HEV(ハイブリッド車)が4台となっている。「それでは残りは?」となるのだが、残り2車種はなんとディーゼル仕様となっている。
GWMはインドネシアだけではなく、東南アジア各国でディーゼル仕様モデルをラインアップしている。GWMに限ってみれば、中国系ブランドとはいえ、東南アジア地域ではICE車のラインアップが目立っているのである。
「タンク」ブランドのようなハードオフローダー系SUVにおいて、東南アジアではトヨタ・フォーチュナーや三菱パジェロスポーツ、フォード・エベレストなどが主力モデルとなっているが、いずれもディーゼルエンジンを搭載している。
GWMタンク500ディーゼル画像はこちら
ちなみに東南アジア、とくにタイでは人気の高いピックアップトラックもディーゼルエンジンがメインとなっている。このようなカテゴリーへあえてBEVで挑戦しようとする中国系ブランドもあるが、GWMは正攻法(ディーゼル)でこのカテゴリーを攻めに行っている点では本気すら感じる。
インドネシアの新車販売事情に詳しい筋によると、インドネシアではGWMのディーゼル車が意外なほどウケているとのことであった。コンパクトカーやクロスオーバーSUVスタイルのBEVでも敷居の高さを感じるのだから、ハードオフローダー系ではいっそうあれこれと余計な心配をしてしまうだろう。山間部などでの使用を考えれば、そもそもICE車という選択がより「安全牌」となるのは当たり前の話だ。
山間部で使用されるピックアップトラック画像はこちら
中国系ブランドのディーゼルエンジンは、環境規制という面では販売可能地域が限られるのではないかとの話もあるが、BEVだけではなくPHEV、そしてHEVを続々ラインアップしてくるなど、とにかく手数が多い。ある事情通は中国系のHEVやPHEVについて「日系のニオイがする」と表現した。別にパクったというわけではなく、日本の自動車メーカーを定年退職したりしたエンジニアをスカウトして開発しているのではないかということを語っているのである。
中国車はBEVだけという認識は明らかに間違いといえるだろう。ただICEの開発に関しては、さまざまな形で日本のノウハウが反映されていそうなところが少々気になるところである。