日本のトラックメーカーは効率化を目指し協業を加速! 裏に潜む「没個性」が生むリスクとは

この記事をまとめると

■トラックメーカー同士はラインアップの穴埋めを目的にOEM供給をしていた

■最近では三菱ふそうと日野の経営統合などが大きなニュースになった

■経営統合によりブランドの個性が希薄化する可能性が懸念されている

協業によるメリットとデメリット

 日本の物流を支える「はたらくクルマ」の世界で、いま大きな地殻変動が起きている。

 かつて、トラックメーカー同士のOEM(相手先ブランドによる生産)供給は、ラインアップの穴埋めという消極的な理由が主なものであった。しかし、現在では業界の存亡をかけた戦略的手段になりつつあるのだ。

 自動車業界におけるOEMは開発コストの削減と、販売車両のバリエーションを増やすことによる販売網の維持を主な目的としている。とくにトラックの世界では、エンジンの排ガス規制や衝突安全基準への対応に莫大な投資が必要であり、自社ですべての車種を開発・生産することは効率が悪いといった事情を抱えている。

 現在、国内市場では「いすゞ自動車・日野自動車・三菱ふそうトラック・バス・UDトラックス」の4社がしのぎを削っているが、その商品に関する境界線は曖昧だ。たとえば、日産「アトラス」がいすゞ「エルフ」の供給を受けていることは有名である。UDトラックスのフラッグシップ「クオン」も一部がいすゞへ供給されるなどというように、かつてのライバル同士が手を取り合うといったことも日常茶飯事となっている。

 さらに、メーカーレベルでの提携も盛んに行なわれている。2023年に発表されたのは、日野と三菱ふそうの経営統合に向けた基本合意だ。2026年内の統合完了を目指すこの動きは、単なる製品の融通を超えた「生き残り」のための決断といえよう。同様に、自動運転・電動化・コネクテッドといった次世代技術の開発は、自動車の分野では不可欠な開発要素だが、多くの資金と人材が必要となる。これを各社がそれぞれ取り組むことは、トラックメーカーにとっては負担が大きい。

 2026年から、日野が三菱ふそうへ中型トラックのOEM供給を開始することが決定した。これは、厳しい排ガス規制への対応を日野側に集約し、三菱ふそうは経営資源を別の成長分野(EVや水素など)に振りわけるといった、極めて合理的な分業体制である。ただ、こういった動きはメーカーとユーザーの双方にとって「諸刃の剣」になりかねない危険性を孕むのだ。

 たしかに、メーカーにとって量産効果によるコスト削減と開発期間の短縮といったメリットがある。ユーザーにとっても使い慣れた販売店のサービスを受けながら、最新の環境・安全性能を備えた車両を導入できるという利点は大きい。しかし、「どのエンブレムを付けていても中身は同じ」という状況は、ブランドの個性を希薄化させかねないのだ。加えて、中古車市場では供給元の車両のほうがリセールバリューは高くなる傾向にあり、OEM車は買い替え時の査定で不利になるリスクがある。

 今後のトラック業界は、ハードウェアの製造だけで利益を出すビジネスモデルから、運行管理や物流効率化といった「ソリューション」の提供へとシフトしていくと思われる。また、日野と三菱ふそうの統合が進むことで、トヨタグループとダイムラートラックという、世界規模の背後関係が結びつくことにもつながるわけだ。

 だとすれば、カーボンニュートラルの実現に向けた水素燃料電池車の共同開発や、自動運転技術の標準化において、OEMという枠組みを超えた、「プラットフォームの共有」の加速が期待されるのではないだろうか。


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