【試乗】アストンマーティン「S」の世界ってどんなもの? 「ヴァンテージS」「DBX S」「DB12 S」の恐るべきパフォーマンスを全開走行で味わってみた (2/2ページ)

SUVでもアストンマーティンらしさは健在

 DBX Sは全長5039mm、全幅1998mm、全高1680mm、ホイールベース3060mmの巨漢に、それまで最強だったDBX707からさらに20馬力アップした727馬力/900Nmを同じ4リッターV8ツインターボから絞り出している。これはエンジンのベースであるAMG本家よりも高出力であり、アストンマーティン社とAMG社との「責任は自社がもつ」という取り決めで実現している。

 筆者がアストンマーティンのワークスチームからニュルブルクリンク24時間レースに参戦した最後の年である2015年当時、レース活動の代表者がそのままDBXの開発担当も兼ねており、ボクにアストン初のSUVは「ランボルギーニ・ウルスのハンドリングを上まわることを目指しているんだ」と明かした。

 その後、完成したDBXにフル定員乗車し、富士スピードウェイでの超高速サーキット走行を平然とこなす特性を体感して、「ああなるほどね」と納得した。とても巨漢のSUVらしからぬフットワークで、スポーツカーメーカーが思い描いたとおりにDBXを仕上げたことを実感したものだ。今日、DBX SでMAGARIGAWAを走行し、10年以上前のそんな会話が蘇った。

 高みのドライバーシートからは、空を見ながら丘を上り切り、平坦になるまで先が見えない最終コーナーたるT17コーナーを、上からの目線で見下ろすドライビングポジションが叶う。DBX Sからの視界の広さであれば、コースの地形も含めて認識しやすいことがよくわかった。まるでMAGARIGAWAのコースレイアウトを上から俯瞰で見ているような感覚を覚えた。

 DBX Sは車重3トン級の巨漢SUVにも関わらず、エンジンパフォーマンスの威力で軽々と加速し、その勢いは0-100km/h 3.3秒だ! 直線ではやはり軽く200km/hを超え、最高速度は310km/hまで押し上げるほどの動力性能は凄まじい。だが、それを扱いやすく提供してくれる点がまた素晴らしい。

 3トン、300km/hカーの勢いを止めるブレーキ力、ステアリング操作に応じたボディのロールを含む動きを自然に抑え込むハンドリング、そして安定性と乗り味の滑らかさが相まって、今回試乗した3モデルのなかで、コストは別にしてダントツで食指が動く1台だった。

 ただ、走行モードのスポーツ+から上への切り替えが上手くいかなかった。試乗車はすでにホットラップ(全開走行)を3クール走行したため、その発熱からエンジンやトランスミッション等々のパワーユニットを守る制御が介入していた可能性はある。

 アストンマーティンが送り出すSUVは、リムジンのようにゴージャスな室内とその空間の広がりが素晴らしい。高級GTカーと純粋なスポーツカーの速さを、優れた乗り味のよさとともにバランスよくまとめたことが、DBX Sの完成度の高さだと思う。

 さて、最後に上陸したばかりのDB12 Sは、せっかくなので味見程度に走行したが、あくまでもMAGARIGAWAの良路、つまり極めて凹凸の少ない滑らかな舗装路面を、日常ではない速度域のサーキット走行による印象だ。これもまたエンジンパフォーマンスが20馬力アップの700馬力/6250rpm、800Nm/2800〜6000rpmのトルクをRWD(後輪駆動)の後輪2本のタイヤのみで路面に伝えるのだが、0-100km/h加速3.5秒というタイムは従来のDB12より0.1秒速く、最高速度は323km/hに達するGT(グランドツアラー)である。

 ヴァンテージS、DBX S、DB12 Sと乗り継ぐと、ヴァンテージSはその能力を上手く引き出すには乗り手を選ぶ存在。DBX Sはスーパーカーの素性そのものを背の高いSUVに押し込んで成立させており、誰もがラグジュアリーサルーンとスーパーカーの二面性を味わえる1台だ。

 そしてDB12 Sは、その自然な操縦フィールと乗り味の滑らかさをもちながら、やはり超絶な速さをもつGTカーらしい、いやスポーツカーとしてのルックスも含めてアストンマーティンらしい2ドアクーペとして、日常で気軽に使えるスーパースポーツをご所望の向きには、DB12 Sをオススメする。人と違う個性、品格と優雅さを持つアストンマーティンはこれである。


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