アウディがガチで計画していた「ディーゼルスーパーカー」! ルマンのV12ディーゼルを積んだ幻のR8とは (2/2ページ)

スーパーカー史に残る異色の挑戦は未完に終わった

 超のつく高性能の代償として、V12ツインターボディーゼルが生む熱量は相当なものとなり、標準R8以上の冷却が求められた。そのためルーフ中央には巨大なNACAダクトが設けられ、走行中の気流を加速しながらV12の2つのシリンダーバンクへ送り込む。さらにフロントとリヤの開口部はそれぞれ標準モデルより20%拡大されており、その必然性がデザインにさらなる凄みを与えている。

 ボディはアウディ・スペースフレーム(ASF)技術によるアルミニウム製で、ボディシェル単体の重量はわずか210kg。自動展開式リヤスポイラーと完全カバードディフューザーの組み合わせにより、ダウンフォースを生み出すという。車重は1860kgで、V12という巨大エンジンを考えれば驚くほど軽くはないが、セラミックカーボンブレーキ(4輪合計24ピストン)の採用により従来比約20kgの軽量化を達成している。

 市販モデル然としたインテリアのハイライトは「ドライブ・セレクト」スイッチだ。「ダイナミック」「スポーツ」「レース」の3モードを選択でき、各モードでエンジン電子制御、トランスミッション制御、マグネティックライドのダンパー特性が連動して切り替わる。そしてレースモードに入れると、メータークラスターの照明色が白から赤に変化。ナビゲーション画面はラップタイマーと組み合わせたサーキット走行専用表示に切り替わり、横Gやブースト圧などのリアルタイム情報も呼び出せる。

 R8にV10モデルが登場するよりも前であったことから、高性能版として市販されるのではないかと期待されたこのモンスターディーゼルだったが、2009年5月、アウディは生産計画の中止を発表する。「ガソリンエンジンのR8をこの巨大なV12ツインターボディーゼルエンジンに対応させるための改造コストが膨大で、販売のみでは投資を回収できない」という理由だった。

 その判断には、世界金融危機の余波が自動車業界に直撃していたタイミングということも少なからず影響しただろう。インゴルシュタットの描いた構想は今なお評価されるべき斬新さだったが、時勢は味方してくれなかったのだ。

 史上まれに見るディーゼルエンジン搭載スーパーカーであると同時に、ハイパフォーマンスとエコロジーを両立する画期的なモデルだったものの、日の目を見ることなく歴史に葬られたR8 V12 TDI。20年前に潰えたその夢の一片を、電動スーパーカーである新型ヌヴォラーリに見てしまうのはマニアの考えすぎだろうか。


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