「最近のクルマってグリルでかくね?」と思ったら100年前はもっと巨大! クルマの顔に対するデザインのプロの意見とは? (2/2ページ)

グリルの大型化による効果は絶大だった

●本格的な大型化はアウディから?

 こうして、一旦は落ち着いていたグリルに変化が見え始めたのは2000年代に入ってからです。

 その先駆けといえるのは、2006年にアウディがA6で提示した「シングルフレーム」ではないかと。これは定番のアッパーグリルと空力を意識したロアグリルを一体化させてしまおうという発想で、決して大型化自体が目的ではありませんが、そのインパクトはかなり大きいものでした。

 実際にこのあと、各メーカーでの巨大化が始まります。当のアウディはシングルフレームの「派手」さが年々進行し、現行型ではグリル内のメッシュも大型化。e-tronシリーズの重層的な表現も巨大化の一種といえます。

 プジョーでも2007年の初代308でロアグリルの大型化が始まり、12年の208でより顕著になります。そして最近ではグラデーション的なドットが顔全体におよび、例の3本爪とあわさることでより派手に。最近まで大人しかったルノーでは、日本未導入の6代目クリオでいきなり巨大化しています。

 そしてBMW。先代の1シリーズあたりから、左右にわかれていたキドニーグリルが一体化されることで大型化が始まり、その後4シリーズや7シリーズで一気に爆発。なんと縦方向にも巨大化が進み、あまりの派手さに賛否が沸き起こったのは周知のとおりです。

 その流れは日本にも押し寄せ、日産はデジタルVモーションで顔中をグリルとし、ダイナミックシールドを掲げる三菱はアウトドアイメージの浸透を目的にワイルド感あふれる顔を作っています。

●手軽で効果的な手法

 さて、こうして振り返ってみると大型化への経緯が見えてきます。1950年代までの大型グリルも、それ以降のコンパクトな横型グリルも、ボディ形状に合わせたごく必然的な形状だったのです。その後、メーカーによる特徴はありつつも、その必然性は90年代まで続きます。

 しかし2000年代に入ると、空力を意識した造形や、マーケティングによる「売れ線」の分析などが相まって、各社が似たようなスタイルになりつつありました。一方で、デザインのインハウス化が定着した各メーカーは、自社商品の特徴を打ち出すべく独自の「デザインフィロソフィ」を掲げるなど、オリジナリティの創出に躍起になったのです。

 そこで各メーカーが目を付けたのが、もともと自社の特徴であったフロントグリル。特徴的な形状やエンブレムを「もっと大きく」「もっと派手に」する手法は、ボディ全体に手を加えなくても想定以上の効果があることがわかったのです。

 ただ、賛否を呼んだBMW自身がグリルをコンパクトにしたコンセプトカー「ノイエ・クラッセ」を発表、方向転換を図り始めるなど、状況は流動的です。また、日本では先の日産や三菱以外を見ると、そもそも「顔ばっかり」のスタイリングを行っていません。

 手軽で効果的な手法とはいえ、そもそも顔だけに注視した造形はカーデザインとして本来の姿とはいえません。各メーカーが独自性を競うとしても、今後はより本質的なスタイリングを期待したいところです。


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すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

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