時代や国籍を超えたひとつの理想系
日産フェアレディZ(S30)
ロングノーズ&ショートデッキといえば、日本車で真っ先に思い浮かぶのは、初代フェアレディZ(S30型)だ。筆者も乗ったことがあるが、まさにリヤタイヤがお尻の下にあって、ステアリングを切ると自分よりも前方だけが動くかのような感覚が印象的だった。
日産フェアレディZ(S30)画像はこちら
なかでもとくにロングノーズが際立っているのが、北米向けに輸出されていた2.4リッター直列6気筒のL24型エンジンを搭載した最上級グレードの「240ZG」だ。通称「Gノーズ」の装着により、標準のS30型よりも鼻先が前方に突き出ていて、ヘッドライトにはアクリル製のライトカバーが配されており、これらによる空力性能の向上も効いて最高速度は210km/hに達した。
歴代Zはどれもロングノーズ&ショートデッキだが、このS30型にかなうモデルはないのではないかと思う。
フェラーリ12チリンドリ
フェラーリの歴代FRフラッグシップ12気筒モデルにもロングノーズ&ショートデッキのものは数多い。そのなかから、ここでは最新の12チリンドリを選んでおこう。ロングノーズ&ショートデッキのプロポーションがもっとも極端に表現されているように思えるからだ。
フェラーリ12チリンドリ画像はこちら
ちなみに「12 Cilindri(ドーディッチ・チリンドリ)」というのは、イタリア語で「12気筒」を意味する。長いボンネットの下には、最高出力830馬力/9500rpmを発生する6.5リッターのV12自然吸気エンジンがフロントミッドシップに収められている。0-100km/h加速は2.9秒と速い。12チリンドリのフロントノーズとデザインには、往年のV12を搭載したFRフラッグシップである名車「365GTB4(通称:デイトナ)」へのオマージュが見て取れる。
また、近年のフェラーリは有機的な曲面主体のデザインが多かったところ、チリンドリは一線を画し、シャープで幾何学的なラインで構成されているのも特徴だ。
ジャガーEタイプ
「ロングノーズ&ショートデッキ」のプロポーションを極限まで美しく体現した、伝説的なスポーツカーがEタイプだ。1961年に発表された際、あまりの美しさに世界が驚嘆したという。某スーパーカーメーカーの創設者をして「世界でもっとも美しいクルマ」といわしめたという有名なエピソードもある。
Eタイプの象徴であるこの「ロングノーズ」のデザインには、美しさだけでなく以下のような理由や特徴がある。長いノーズには、初期の「シリーズ1」には3.8リッター、途中で4.2リッターへと排気量が拡大された直6エンジンが、さらに「シリーズ3」では、5.3リッターV12エンジンが収められていた。
ジャガーEタイプ画像はこちら
デザインを担当したのは、ジャガーのCタイプやDタイプというレーシングカーを手がけた航空工学の専門家であるマルコム・セイヤーだ。彼は見た目の美しさはもとより、空気抵抗を減らすための計算を用いてこのボディを設計したという。その結果、グッと低いフロントノーズと美しく膨らんだフェンダーラインが融合する、唯一無二のシルエットが完成した。
Eタイプが確立した「ロングノーズ&ショートデッキ」の黄金比は、その後の世界中のスポーツカーに大きな影響を与えたといわれている。