TVに映すな! このレース出禁! ポルシェの「そこまでやるか」なレースにかける執念 (2/2ページ)

レースから締め出されても技術で覆してきたポルシェ

 話は横道にそれるが、GTカーによるドイツ国内選手権(DRM)にも935は参戦したが、935があまりに強すぎてこのクラスがTV中継から外される出来事があった。逆に、2リッター以下のBMWやフォードが争うクラスに人気が集まり、このクラスのTV中継が決まると、ポルシェは1.4リッターターボエンジン(自然吸気換算2リッター)を積む935babyを作り上げ、ここで勝ちまくる強さを発揮。力ワザを示す側面も見せていた。

 936、935とグループCカー956とのはざかい期となる1980年のル・マンに、ポルシェは生産車、FR方式の924(1983cc)をベースにターボを装着した924GTPを繰り出していた。FRモデルのレース潜在能力を試す目的だったようだが、IMSA/グループ5規定の935に混ざり総合6位で完走する戦闘力の高さを見せていた。

 GTPのPはプロトタイプクラスであることを示し、936やロンドーと同カテゴリの参戦となり、ドライバーにユルゲン・バルトとマンフレッド・シュルティを起用していたから、紛れもなくポルシェAGのワークスマシンといえる存在だった。

 以後、1980年代初頭から1990年代初頭のグループCカーの時代は、956/962Cの黄金期として知られているが、このグループC規定からGTカー規定に変わった1994年のル・マンに、ナンバーを取得し公道走行が可能なダウアー・ポルシェ962LMが登場した。ヨッヘン・ダウアーが企画した車両だったが、実質はグループCカー962Cに公道走行が可能な装備を施した車両で、見事にこの年のル・マンを勝ち取っていた。ル・マン参戦のためのGTカー公認取得モデルで、ほかの市販GTカーと一線を画していたことはいうまでもなかった。

 レギュレーションの隙間を突いたダウアー962の出現に懲りてか、その後のGTカー規定は再整理されたが、1998年のル・マンに登場した911GT1-98は、名前こそ911だったが、実態は量産車とまったく共通点のない完全なレーシングプロトだった。車体は屋根まで一体化成形されたフルカーボンモノコック。エンジンはポルシェの新時代を担う水冷の水平対向エンジンが使われていた。

 フロントセクションに生産車(993)のスチールモノコックシャシーを使う911GT1-97が全車予選落ちする厳しい戦力分布のなか、唯一決勝に進んだ2台の911GT1-98は、終わってみれば1ラップ差のワン・ツー・フィニッシュを決める完勝ぶりを発揮。名前だけが911、中身はまったく別物の高性能マシンだった。

 こうした意味では、LMGTEクラスに登場した2017年、2018年の911RSRも異色の存在といえた。ポルシェ911といえば、1964年に初代モデルが登場して以来、水平対向エンジンとリヤエンジン/リヤドライブを身上としてきたが、フェラーリ488やコルベットC7R、フォードGTといった強敵を相手に苦戦を強いられるなか、ついにミッドシップ方式の採用に踏み切った車両だった。

 LMGTE車両だけの特別な仕様だったが、この変更によってシャシーバランスとハンドリングが格段に向上。LMGTEクラス全30台中(Pro17台、AM13台)でProクラスの1、2位を占める快走ぶりを披露。ポルシェはプロトクラスで919ハイブリッド(2017年)も走らせる体制だったが、量産車ベースのクラスで完勝を遂げたことは同社にとって大きな勲章となっていた。

 勝つためには、レギュレーションぎりぎりの車両作りも行ってきたポルシェだが、必ず結果に結びつけてきた活動内容は、スポーツカーメーカーの第一人者たる技術力を証明する以外の何物でもなかった、と高く評価できるだろう。


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