クマの侵入は防げないけどセキュリティは作動する
今回のテストでは、タグが車内へ侵入しようとした瞬間、スマートフォンへ異常を知らせる通知が送信された。また、荷台用カメラにはタグの姿が鮮明に映し出され、その映像はクラウドへ保存されたという。実際の盗難でも、オーナーは映像を確認できるほか、証拠として保険会社へ提出することも可能になる。
フォードF-150のセキュリティと連動したスマホ画像はこちら
興味深いのは、開発チームも予想していなかった発見があったことだ。
タグは人間さながらにドアハンドルを操作し、難なくドアを開けてしまった。これは、手袋を着けた状態でも扱いやすいよう設計されたドアハンドルが、その操作性のよさによってクマにも通用してしまうということを実証してしまったことだ。これにフォードの開発担当者は、「実験室では決して得られない知見だった」とコメントしている。
フォードF-150とクマ画像はこちら
それにしても、セキュリティの実証実験にコディアックベアを起用するとは、いかにもスケールの大きいアメリカらしい発想だ。日本でセキュリティシステムの性能を紹介するといえば、耐久試験や衝突試験の映像を公開する程度が一般的だろう。しかしフォードは、本物の巨大グマをキャスティングし、「もし地上最強クラスの侵入者が現れたら」というシナリオをエンターテインメントとして成立させてしまった。
もちろん、自動車盗難犯がクマ並みの腕力をもっているわけではない。それでも、「これほど過酷な状況でもシステムは正常に作動する」というメッセージは、スペック表や技術説明を並べるよりもずっと説得力がある。
フォードF-150とクマ画像はこちら
冒頭で触れたように、日本ではクマの市街地出没が深刻なニュースとして連日のように報じられている。それだけに、「クマにも負けないクルマ」が誕生したのかと少し期待してしまったが、さすがに800kg級のコディアックベアを相手にすれば、タフで堅牢なF-150でもひとたまりもなかった。やはり対クマ性能については、イーロン・マスクあたりが「バイオハザードモード」に続く新機能として、「ベアモード(対クマモード)」でも開発してくれるのを待つしかないのかもしれない。