厳しすぎる規制でもう楽しいエンジン車には乗れない! 悲観論が漂うEV時代に「エンジン好き」をも唸らせる走る歓びが生まれ始めていた (2/2ページ)

電動車ならではの走りの技術たち

 電動スポーツカーのトレンドはサウンドエフェクトと変速感エンジンを高回転まで引っ張って生まれる爆発的なパワーや官能的なサウンド、心地よい振動やオイルの焼ける匂いなど、昔のスポーツカーはドライバーの五感に訴えかけてアドレナリンを放出させてきた。だが、残念ながら規制の壁がそういったノスタルジーを許してはくれない。燃費規制や騒音規制は、走る歓びやクルマのキャラクターをも規制してしまうのだ。

 とはいえ、自動車メーカーはこれからも生き残りをかけて技術開発していかなければならない。そこで近年はBEVやPHEVでも走る歓びを持たせる試みがなされているのだ。

 もっともシンプルでわかりやすいのがサウンドによる演出だ。パワートレインがほぼ無音のBEVでも、加減速に応じて車内のスピーカーからサウンドを発するもので、エンジンに似せたタイプがポピュラーだが、あえて電子音的にして未来感を出すタイプもある。登場当初はいかにもギミック的で、興ざめしたものだが、近年では驚くほど作り込んだモデルもある。

 その最たるモデルが2023年に発売されたヒョンデ・アイオニック 5 Nだ。ベースのアイオニック 5とはモーターもシャーシも別モノで、本格的なサーキット走行も視野に入れた高性能モデルとなっており、「N Active Sound+」を搭載。スポーティな2リッターターボエンジンを模したサウンドで、アクセルオフなどではバブリング音まで演出される。そのほか、モーター音を加工して未来感を演出したサウンド、ジェット戦闘機のような迫力のあるサウンドなども用意。

 さらに、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)のようにシフトショックまで再現。パドルで任意にシフトチェンジもできる。ゴルフGTIに代表される、スポーティなターボエンジン+DCTをドライビングしているかのようだ。

 間もなく発売されるホンダSuper-ONEも、BOOSTモードによって仮想有段シフト制御とアクティブサウンドコントロールが始動してドライバーを刺激する。アメリカンV8のように低くビートの効いたサウンドで「小さいくせに生意気」な雰囲気がSuper-ONEのキャラクターに合っている。さらに、仮想のエンジン回転やギヤ段ごとに、リアルな駆動力を再現。低いギヤのほうがレスポンスはよく、トルクも厚くなるようにーターを制御しているのだ。マニュアルモードで回転上限まで引っ張れば、自動でシフトアップせずに仮想レブリミッターが作動するというこだわりも見せる。

1000馬力級のハイパワーと緻密な制御は電動車ならでは

 フェラーリやランボルギーニといったスーパースポーツではPHEVがラインアップの一部を占めるようになってきた。環境対応よりもパフォーマンスアップをアピールすることでユーザーを惹きつける戦略で、最高出力1000馬力、最大トルク1000Nmの大台超えも実現。純エンジン車では達成が難しい領域に高めている。

 さらに、リヤはエンジン+モーター、フロントは左右それぞれに独立モーターの合計3モーターというのもトレンド。トルクのかけ方によって旋回力を高めるトルクベクタリングの極致とも言える構成となっている。ビジネスとしてはうまくいかなかったホンダNSXが先駆けた技術が、欧州メーカーで華を咲かせつつあるのは皮肉なものだ。

 3モーターほどではないにしても、電動車はトルクベクタリングなど高度なシャーシ制御技術が可能になる。日産のe-4ORCEやトヨタのE-Fourなど、FFベースのハイブリッドカーのリヤにモーターを搭載した4WDならば、前後トルク配分を制御することで理想的な挙動を追求することが可能になる。

 ギミックサウンドとシャーシ制御は電動車に走る歓びをもたらす武器となる技術。まだ純エンジン車ならではの魅力には及ばないことは認めざるを得ない。だが、電動化時代の新しい”走る歓び”が生まれつつあるのも事実だ。

※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております


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