ブラバス最速伝説の礎となった
特筆すべきは、330km/hという数字が「電子制御によって制限された」数字だという事実だ。ブラバスによれば、当時の技術ではこれほど重い車両(約1800〜1850kg)がそれ以上の速度で走行できる市販タイヤが存在しなかった。つまり理論上はさらなる最高速が出せたにもかかわらず、タイヤの技術的限界が壁となった。この逸話がE V12の伝説性をさらに高めている。
210型E V12の最大の特徴は、この驚異的なパフォーマンスが「ほぼ見た目では判断できない」ことにある。カーボンファイバー製エアロキットによって車幅は36mm拡大されており、フロントスプリッターとリヤスポイラーリップも装着されているが、全体的な印象は標準のEクラスと大きく変わらない。ブレーキはフロントに12ピストンキャリパーと380mm径ディスクを、リヤには6ピストンキャリパーと360mm径ディスクがおごられ、制動力は330km/hからの減速に対応する。ホイールはブラバス・モノブロックQで、19インチ9.5Jにヨコハマタイヤが装着された。
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外見はごく普通の中型高級セダン/ワゴンでありながら、アウトバーンではフェラーリやランボルギーニをもっとも簡単に置き去りにする。E V12はまさに「羊の皮を被った狼」を超えた存在といえるだろう。
正確な生産台数はブラバスから公式に発表されていないが、複数の情報源が10〜15台程度と推定している。価格は約45万7700ドイツマルク。当時の換算で約27万5000ドル(約2750万円)という設定は、標準的なEクラスのじつに4倍以上に相当する。それでもこの少量が完売したのは、「世界最速」という称号と唯一無二の存在感が顧客を惹きつけたためだろう。
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後継は211型をベースにツインターボを追加した「E V12 ビターボ」(640馬力・350.2km/h)へと進化し、212型ベースの「E V12 ワン・オブ・テン」(800馬力・370km/h)、CLSクラスにベースを変えた「ロケット」シリーズへと系譜を継いでゆく。その最初の一撃を放ったのが、この無骨で飾り気のない210型E V12だったというわけだ。