「辞めたいのにファンが許してくれない……」 累計10万本も作った77歳の凄腕職人が送り出す「鉄チンワイドホイール」の世界 (2/2ページ)

蓄積されたノウハウと職人技で製作される芸術的鉄チンワイド

 ところで、スチールホイールのワイド加工とはどんな作業を行うのだろうか? 大迫さんに簡単に説明してもらうと『旋盤にホイールをかけてフロント側のリムを切断し、切断面に鉄板を円筒状に加工した部材を挟み込んで再び溶接することでリム幅を拡幅している』。

 言葉にすると簡単だが、これを高い精度で組み上げるためにはさまざまな工夫と高い加工技術が必要だ。実際にファクトリーのなかを見せてもらったが、芯を出した状態ですべてを固定するための治具や、ホイールを回転させながら自動で溶接する機械など、そのほとんどが大迫さんが効率を考えて自身で考案し製作したもの。長年積み重ねてきたノウハウ、そして職人の技術によって加工ホイールは高い精度で製作されている。

 半世紀の間に加工したホイールの総数は、10万本を軽く超える。1台4本と考えても、ざっと2万5000台分。これほど多くのホイールが世に送り出されているのだ。これをハンドメイドに近い小さな工場が成し遂げたと考えると、驚異的な数字と言っていいだろう。

 ちなみにホイール加工が人気だった時代には、ほかにもワイド加工を請け負う業者があったそうだが、当時から独自の製造方法を確立し、高い加工精度を誇った鎌ヶ谷ワイドホイールは、なかでも抜きん出た存在だったようで、周囲がどんどん廃業していくなかでもその人気は衰えることがなかった。

 現在では旧車オーナーからの加工ワイドホイールの製作需要が多く、なんと海外からもホイール製作の依頼だけでなく、見学のために工場を訪れる人もいるそうだ。いまや鎌ヶ谷ワイドホイールの小さな工房は、世界のクルマ好きたちの聖地のひとつになっているのだ。

 また、あまり知られていないが、ワイドホイール加工は旧車向けだけに限らない。ゴルフ場では芝生へのダメージを抑えるため、コース管理用の軽トラックに装着する目的での依頼も多いという。

 さらに、アルミホイールの修正についても独自の技術とノウハウを持ち、他店で対応できなかったホイールを”最後の駆け込み寺”として持ち込まれるケースもある。

 最後に大迫さんは「今年で77歳になるんで、そろそろ引退かなって考えているんだけど、やっぱり頼まれちゃうと断れなくてね。本当はもう辞めたいんだけど(笑)、まわりが辞めさせてくれないんだよね。体力的にいつまでできるかわからないけど、やっぱりこの仕事が好きなんだよ」と笑顔で語った。

●SHOP INFO

鎌ヶ谷ワイドホイール

住所:千葉県鎌ヶ谷市初富311-3
TEL:047-444-7801
営業:9:00~18:30
定休日:毎週木曜日、第3日曜日、GW、夏季、年末年始
※不定休ありのため、ご来店前にご連絡ください

※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております


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