室内の上質さに加えて居住性や使い勝手も大満足
インテリアの完成度は、このクラスではトップレベルといえるだろう。メーターパネルとセンターディスプレイには、それぞれ12.3インチ液晶を横一列に配置したデュアルディスプレイ構成を採用。視認性が高く、エネルギーフローやナビゲーション、先進安全装備の作動状況などを分かりやすく表示する。表示デザインも洗練され、先進的なコクピットを演出している。
さらに印象的なのは素材選びだ。インストルメントパネルやドアトリムにはプレミアムファブリックやソフトパッドを採用し、ドライバーや助手席乗員が自然に触れる部分の質感を高めている。ナビゲーション操作時に手を添えるフィンガーレストにもファブリックを貼り込み、操作性と触感を両立させた。エアコン操作部は静電タッチ式とし、物理スイッチを減らしたことで室内全体の上質感を一段と引き上げている。

Gグレードはビーガンレザーシートとゴールド加飾を組み合わされコンパクトSUVとは思えないプレミアムな雰囲気を演出している。前席にはシートヒーターとステアリングヒーターを標準装備し、冬場の快適性にも配慮されている。

後席の居住性も大幅に改善された。全長を75mm、全幅を40mm拡大したパッケージングを活かし、ニールームやヘッドルームはクラストップレベルの広さを確保。センターコンソール後端には後席専用エアコン吹き出し口とUSB Type-C端子を備え、ファミリーユースにも十分応える装備内容となった。

荷室容量が476リットル(FF車)まで拡大され、開口幅も従来型より139mm広げられている。ゴルフバッグや大型ベビーカーの積載性も向上し、日常使いからレジャーまで高い実用性を発揮するだろう。

先進運転支援システム「プロパイロット」も進化した。新型フロントカメラは水平画角が約2倍、解像度は約6倍となり、AIを活用した道路認識によって車線だけでなく道路全体を判断しながら制御を行う。そのため車線中央維持制御はより自然になり、従来以上に滑らかなステアリング操作を実現している。高速道路での疲労軽減効果は確実に高まったといえる。

四輪駆動モデルに搭載されるe-4ORCEも注目したい。リヤモーターの出力向上に加え、前後モーターとブレーキを統合制御することで、発進から高速巡航まで前後駆動力を緻密に配分する。旋回初期には後輪側へ積極的に駆動力を配分し、車両の向きを自然に変えながらコーナリングを開始。さらに内輪のブレーキ制御によってヨーモーメントを発生させることで、雪道や濡れた路面だけでなく舗装路でも安定した旋回性能を実現している。

FFモデルは、市街地を中心に使うユーザーであれば十分以上の完成度を備えている。モーター駆動ならではの緻密なトラクション制御によって発進時の安定感は高く、雪が少ない地域であればFFを積極的に選ぶ理由も十分ある。WLTCモード燃費25.7km/Lという数値だけでなく、実際の市街地ユースで高い燃費性能を維持しやすい点は第三世代e-POWERの大きな強みだ。

一方で、降雪地域や高速道路を走る機会が多いユーザーには、やはりe-4ORCEを推奨したい。価格はFFより高くなるものの、前後モーターによる駆動力制御、ブレーキとの統合制御、スノーモードなど価格差以上の安心感と走行性能が得られる。雪道だけでなく、雨天時やワインディングでも姿勢変化が穏やかで乗員の快適性向上にも寄与している。

ライバルはホンダ・ヴェゼル、トヨタ・ヤリスクロス、カローラクロスなど強豪が並ぶカテゴリーだ。室内空間や荷室容量ではカローラクロスに分があるが、電動車らしい静粛性、モーター駆動の滑らかさ、そしてインテリアの質感では高い競争力をもつ。とくに「移動そのものの質」を重視するユーザーには魅力的な選択肢となるだろう。
第三世代e-POWERは、単に燃費性能を向上させただけではない。エンジンの存在感を薄め、モーター走行の時間を増やすことで日常の運転そのものをより快適で上質なものへ進化させている。さらに刷新したプラットフォーム、高性能ダンパー、電動ブレーキブースター、進化したプロパイロットなど、車両全体をトータルで磨き上げたことで走りの質感が従来型から大きく飛躍した。

新型キックスはコンパクトSUVという枠を超え「電動車ならではの上質な移動」を身近な価格帯で実現した1台といえる。第三世代e-POWERの完成度の高さは今後の日産車の基幹技術として大きな魅力となりそうだ。
