日産ファン待望ともいわれる「シルビア」の復活はある? いまの状況から現実的に考えてみたらやっぱり厳しそう!! (2/2ページ)

ファンの声とマーケティングは別問題

 まず、クルマの骨格となるプラットフォームから見ていきたい。シルビアというのだから、さすがにFRで作らないと大炎上は間違いない。間違ってもFFで作った日には即終了。では、日産にFRのプラットフォームがあるのか? パッと思いつくのはやはりフェアレディZ(RZ34)やスカイライン(V37系)に使われているFR-Lプラットフォームだろう。2001年から25年も使われているのにも驚きだが、さすがにこれは大きすぎる。直列4気筒のコンパクトなエンジンにFR駆動というシンプルなパッケージを求めている層には不向きだろう。

 もちろん、これをベースに切った貼ったをすれば不可能ではないが、きっと「もとが2001年の骨格じゃん!」とかいう人もきっと出てくるので、マーケティング上なんともいえなさそうだ。GT-R用のPMプラットフォームなんてのも最近まであったが、これも大きいしそもそも4WD用であるし、シルビアのキャラを考えたらオーバースペックだろう。

 心臓部であるエンジンはどうだろう。残念ながら、直列4気筒のエンジンはあるがどれもスポーツ向けのエンジンかといわれると難しい。FR駆動のフェアレディZやスカイライン用にV6エンジンがあるが、「ならZでいいじゃん」となるのでこれを使うのも現実味がない。しかし、FFに使われているエンジンの搭載向きを変えればFRに流用可能なことも多い。アライアンスを組んでいるルノーのメガーヌR.S.などに搭載されていたM5Pエンジンのベースである、MRA8DEエンジンなんかがまだ使えるなら、1.8リッターだがこれはかなりいい相性かもしれない。

 なお、間違っても「電気の日産」とかいってEVで出した日には大炎上待ったなし。e-POWERもシルビアを欲しがっている層には刺さらないだろう。

 実際、S13などのシルビアに搭載されていたCAエンジンやSRエンジンは、当時の日産における大衆車向けエンジンであり、特別なモノではなかったので次期シルビアを作るとするなら、一般的なHRエンジンをなんとかすれば使えそうだ。エクストレイルに搭載されて話題になった、可変圧縮技術を使ったVCターボは耐久性の面で難があると関係者から聞いたことがあるので、話題性としては申し分ないが、相当に詰めないと、こちらはスポーツカーには使えないだろう。トランスミッションはおそらく釜(ケース)をなんとかすればどうにでもなるので、この件は心配いらなそうだ。

 ボディのデザインやインパネのデザインはどうにでもなるので、ここでは省略する。

 では、実際にこんな感じでパーツを寄せ集めて、本当にシルビアは作れるのだろうか? 結論からいうと、現在の日産の体力では、かなり厳しいだろう。新車1台の開発費というのは、俗に1000億円以上といわれている。日産は2026年3月期に5000億円以上の赤字を出したことで話題になった。新車の開発はその5分の1もの費用が掛かる。

「シルビアが欲しい!」といっている層はネット上ではかなりいるようだが、「そもそも彼らが本当に買うのか?」というのが、メーカーが1番不安視しているところだ。「こういうクルマが欲しい!」といわれてメーカーが応えて世に出した結果、きっと受け入れられた数より裏切られた数のほうが相当多いだろう。とある輸入車のMTモデルも、日本のファンが熱望した結果入れたのに、大量在庫を抱える羽目になったという話も聞いたことがある。おそらく、最低限でも上記のようなことをやって、シルビアを復活させたとして、採算を取るとしたら一体新車価格はいくらになるのだろうか……?

 R35GT-RやフェアレディZ(RZ34)の開発主査を務めた田村宏志氏は、「シルビアは復活できないんですか?」というファンからの問いに対して「シルビアを欲しがっている人は、本当に出たらそのシルビアを買うんですかね……? 昔の200〜300万円みたいな価格は厳しいですよ……? 声は多いですけど、それがそのまま消費者にはならないですからね」と疑問を呈していたこともある。

 少なくとも、S13のころのように200万円前後で出すことは現状ほぼ100%無理だろう。軽自動車ですらそのラインからスタートなのだから、いくら装備を簡素化しても現実的ではない。さらに、世の中から電動化を求められている自動車メーカーの立場的には、現状では純ガソリンのFRスポーツの復活はかなりハードルが高い。

 仮に、あの手この手でなんとか300万円以下で次期シルビアを強引に作ったとして、欲しがっていたファンは本当にそれを理想のシルビアとして受け入れるのだろうか?

 一時期、東京モーターショーで発表されたコンセプトモデル、「IDx」は「シルビアの再来だ!」ともいわれていたが、これがみんなが望むS13〜S15が持つ薄くて平たいクーペなのかというとちょっと怪しい。どちらかというと初代シルビアのようにも感じる。もしこれが今、再度復活したとてシルビアではないだろう。

 一方で、GR86やBRZが売れまくっているのは、トヨタという一大ブランドによる緻密な戦略とモリゾウこと豊田章男氏によるブランディング力、そしてメーカーの体力があるからこそできる思い切った価格設定にある。トヨタでさえ、スバルと組んで86を作った背景には、「スポーツカーなんてニッチなもの、共同でやらないとコスト的に危なかったから、使えるものは流用した」という大前提があったのだ。ロードスターが売れているのも、ロードスターという1989年の誕生以来絶えることのない、圧倒的信頼性とブランド力があるからにほかならない。S15の生産終了から25年を迎えようとしているだけに、途切れた血統の溝は想像以上に大きい。

 もちろん、ひとりのクルマ好きとしてシルビアが復活してくれたら当然嬉しい。しかし、中途半端な姿で出てきたり、それこそフェアレディZ並かそれ以上の価格で出てきたら、それはそれで、「凄いけどなんか違う」という感想になるだろう。現在販売されている、現行型のシビックタイプRでさえ、かなり売れている一方でまだまだ「こんなのシビックじゃない!」という声も少なくない(いい加減受け入れて欲しいが……笑)。

 安価で楽しいピュアFRスポーツとして一世を風靡したシルビアの伝説は、そっとしておいたほうが全クルマ好きにとって1番幸せなのかもしれない。クルマ作りはボランティアではないのだ。とはいえ、もし密かに開発が進んでいたら、それはそれで楽しみであるが果たして……!?


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WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

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