ずっとFRだったF1セーフティカーがはじめて4WDに! 612馬力で速さも安全性も極めたAMG GTのセーフティカーの中身

この記事をまとめると

■2026年からはメルセデスがF1にセーフティカーとメディカルカーを単独供給する

■メルセデスAMG GT 63 PRO 4MATIC+がセーフティカーとして登場

■F1公式セーフティカー初の4WDや専用の安全・通信装備により高い安全性を実現した

612馬力・4WDでF1を先導

 F1のセーフティカーは長年にわたって後輪駆動のモデルが担ってきた。しかし、メルセデスAMG GT 63 PRO 4MATIC+の登場により、その歴史に初めてAWDモデルが加わった。「AMG Performance 4MATIC+」と呼ばれる完全可変式AWDシステムを採用し、F1のサーキットで求められるトラクションと安定性を格段に引き上げている。

 エンジンは4リッターV8ツインターボで、最高出力612馬力・最大トルク850Nmを発揮する。トランスミッションは9速のAMGスピードシフトMCT。ブレーキにはAMGハイパフォーマンス・セラミックコンポジット・ブレーキを採用しており、F1マシンが130km/h前後の速度で追従してくる状況でも確実に制動力を維持できる設計だ。タイヤはピレリのウルトラハイパフォーマンス「P Zero」を装着する。

 セーフティカードライバーとして長年コクピットに座り続けるベルント・マイランダーは、この新たなセーフティカーについて「AMG GT 63 PRO 4MATIC+は、最高水準の安全性と印象的なスポーツ性・ドライビングプレジャーを兼ね備えており、とくにコーナリングと加速時に4WDの恩恵が顕著に感じられます」と、その市販車離れした性能を語る。

 一般的にセーフティカーは「速さ」よりも「安定性と視認性」が優先される。メルセデスAMGは市販車ベースのGT 63 PRO 4MATIC+を、F1専用の大幅な強化を施したうえで投入した。新設計のフロントスプリッター、能動フラップ付きの改良リヤウイング、そしてフロント部に配置されたダイブプレーン(エアロフィン)を組み合わせることで、とくに高速コーナーと高速走行時の安定性を向上させ、フロントアクスルに追加のダウンフォースを発生させる設計となっている。

 安全・通信装備の面ではFIA規定に準拠したラジオ、GPS、カメラ類が装備されるほか、ロールケージや6点式ハーネス、レーシングバケットシートといったハードなドライビングにも耐えられる装備も搭載する。そして、リヤウイングに統合されたシグナリングシステムと追加LEDにより、どんな天候・照明条件でもF1マシンドライバーへの視認性を確保している。

 GT 63 PRO 4MATIC+はメルセデスにとってF1の公式セーフティカーとして14台目のモデルにあたる。メルセデスがこの役割を担い始めたのは1996年のことで、2026年でちょうど30周年という節目を迎えた。

 近年はアストンマーティンと役割を分担してきたが、2026年シーズンからメルセデスがセーフティカーとメディカルカーの双方を単独で供給する体制に一本化された。ハンガリーGPでのデビューにあわせてマイランダー車には特別な30周年記念リバリーが施されており、30年の歴史への敬意が随所に表れている。

 1996年にSL500がコースに登場してから三十余年。V8ツインターボ・4WD・612馬力という現代の怪物が「安全のために走る」というサーキットの日常は、技術の進化を端的に示す光景だ。


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