日本の技術力が世界を支えた
続いては欧州の歴史あるプレミアムブランドが、自社のラインアップ拡充や信頼性向上のために、日本の技術を頼ったケースである。
●代表例1|ローバー 600/800シリーズ
パワーユニット:ホンダ製2リッター/2.3リッター直4(F型)・2.7リッター V6(C27A)など
1980年代から90年代にかけて、英国の名門ローバーグループとホンダは広範な資本・技術提携を結んでいた。その提携から生まれたフラッグシップサルーンが「800シリーズ(レジェンドと共同開発)」で、ミドルクラスセダンが「600シリーズ(アコード系ベース)」だった。
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当時の英国車は伝統的なウォールナットウッドやコノリーレザーが醸し出す雰囲気こそ至高だったものの、電装系やメカニズムの信頼性にはけっこうな不安が付きまとっていた。そこに組み合わされたのが、当時世界最高峰のスムースさと耐久性を誇ったホンダのエンジン群だった。
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※画像はホンダ・レジェンドのエンジン
ジェントルな英国調サルーンの佇まいをもちながら、セル1発で確実に始動し、ひとたび踏み込めばシルキーに高回転まで吹き上がる。それはまさに「英国の気品と日本の信頼性の、理想的な婚姻」ともいえる関係性だったのかもしれない。
●代表例2|ボルボ XC90(初代)/S80(2代目)
パワーユニット:ヤマハ製 4.4リッター V8(B8444S)
「安全」の代名詞ともいえるスウェーデンの雄、ボルボ。彼らが北米市場でのシェア拡大を狙い、フラッグシップSUV「XC90」やサルーン「S80」に搭載するために選んだV8ユニットは、日本のヤマハ発動機とボルボが共同開発したものだった。
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ボルボには「万が一の前面衝突のときに乗員空間を守るため、エンジンは横置きでなければならない」という強固な設計思想があった。だが、通常のかさばるV8エンジンを横置きするのはスペース的に困難を極める。そこで白羽の矢が立ったのが、超高精度な2輪レース用エンジンの小型化技術をもつヤマハだった。
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ヤマハとボルボはバンク角を60度と狭角にし、補機類の配置を徹底的に詰めることで、驚異的にコンパクトな4.4リッターV8ユニット「B8444S」を完成。低振動かつウルトラスムースで、踏み込めば独特の快音を奏でるこの名機は、あとに英ノーブル社のスーパーカー「M600」にもツインターボ化されて流用されたほどの実力をもっていた。
●代表例3|スマート フォーフォー(初代・ブラバス含む)
パワーユニット:三菱製1.3リッター/1.5リッター直4(4A90/4A91)・1.5リッターターボ(4G15)
ダイムラー・クライスラーと三菱自動車の提携関係から生まれたのが、2004年に登場した初代スマート フォーフォーである。
初代スマート フォーフォーは三菱 コルトとプラットフォームやパワートレインを共有しており、オランダのネッドカー工場で混流生産されていた実用グレードには、三菱とダイムラーが共同開発したアルミブロック直4ユニット「4A9型」が搭載されていた。
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そして白眉は、そのハイパフォーマンス版である「フォーフォー ブラバス」だ。ブラバスのチューニングを受けた車体に搭載されたのは、コルト ラリーアートなどと同系の三菱製1.5リッター MIVECターボ「4G15型」。最高出力177馬力を絞り出し、軽量なボディを強烈に加速させたスマート フォーフォーのブラバスバージョンは、そうは見えなかったかもしれないが、じつはラリーアートの血統を引く1台だったのだ。
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※画像は三菱 コルトラリーアートバージョンRのエンジン
最後は、極限のタフネスを求められたモンスターマシンと、新興メーカーの夜明けを支えた日本製ユニットを紹介したい。
●代表例1|ハマー H1アルファ
パワーユニット:いすゞ製(DMAX)6.6リッター V型8気筒ディーゼルターボ「デュラマックス」
米軍の軍用車「HMMWV(ハンヴィー)」をルーツに持つ究極のオフローダー、ハマー H1。その生産終了直前の2006年モデルとしてわずか1年間のみ、少数が生産された最強最後の完成形が「H1アルファ」だ。
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それまでの古色蒼然とした6.5リッターデトロイトディーゼルに代わり、頑強なボディの心臓部に収まったのは、GMといすゞ自動車の合弁会社「D-MAX」が開発した6.6リッター V8直噴コモンレール式ディーゼルターボ「デュラマックス」だった。
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いすゞが長年培ってきた商用ディーゼルの超高耐久・高効率技術が惜しみなく注ぎ込まれたこのユニットは、300馬力以上のパワーと704N・mを超える強大なトルクを発揮。3.5トンを超える超重量級ボディを軽々と押し出すパワーと圧倒的な走破性を、ハマー H1にもたらした。あの巨大マシンのクライマックスを支えたのは、じつは日本のディーゼル技術だったのだ。
●代表例2|ヒュンダイ・ソナタ(初代)
パワーユニット:三菱製 1.8リッター/2リッター 直列4気筒「シリウス(4G62/4G63)」
いまや世界トップクラスの自動車メーカーへと成長した韓国のヒョンデ。だがその黎明期である1980年代は自社開発のエンジンをもたず、ほかの国からの技術供与に頼っていた。そして、その最大のパートナーこそが三菱自動車だった。
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1985年に登場した初代ソナタは、その2年前に登場した「ステラ」の上級仕様として開発された中型セダンで、ボンネットに収まっていたのは三菱製の直列4気筒「シリウス」エンジン(4G62型および4G63型)だった。
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※画像は三菱 ランサーエボリューションのエンジン
ヒュンダイ(現ヒョンデ)はソナタやエクセル、グレンジャーといった主力車種に三菱のパワートレインとプラットフォームを採用し、徹底的にノウハウを吸収することで世界進出への足がかりを築いた。ヒョンデがグローバルメーカーとして飛翔するための助走期間を支えたのは、日本の三菱製エンジンだったりもするのである。