この40年でF1が速くなり続けたのは電子制御のおかげ! 一方で極論「ドライバー不要」までイケる電子デバイスのジレンマ (2/2ページ)

電子化はどこまで進むのか

 ちなみに現在のF1は、1.6リッターV6ターボで最大過給圧は4.8バール。ただし、フューエルエナジーフロー(単位時間あたりの燃料流量)が規定されているため、排気量の枠内で無限にパワーを引き出すことはできないようになっている。また、2026年からMGU-H(熱エネルギー回生システム)が廃止(開発費用があまりに高額になるため)され、MGU-K(運動エネルギー回生システム)のみの仕様となっている。最高出力値の公表はないが、およそ1000馬力と考えてよいようだ。

 ターボ過給が常識化するF1の流れの中で、ほかにも電子制御を駆使した先進技術として、路面入力に対してリアルタイムで反応するアクティブサスペンションの例があった。自動車運動3要素の「曲がる」領域でのシステムだ。アンチロールサスペンションといい換えてもよいが、大ざっぱにいうと、路面入力に対する人工反力といえるものだ。縮み側の入力に対してそれを押し返す伸び側の反力を発生させるシステムのことだが、路面入力を受けてから反力を発生させる(フィードバック制御)のでは遅すぎるため、路面入力を先読みしたフィードフォワード制御が必要となってくる。

 スピードとパワーの象徴ととらえられがちなF1だが、量産車レベルとは次元の異なる高性能を可能にしているのは、ひと口でいってしまえば電子制御技術である。現在は、量産車の安全性確保の技術として装着が義務づけられた車両挙動の安定化装置、言い換えればアンチスピンシステムのことだが、これの実用化も世界に先駆けたのはベンツ(ESP=エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)とトヨタ(VSC=ビークル・スタビリティ・コントロール)だった。

 とくにベンツは、市販車に先立ちモーターレーシングの分野でこのシステムを試用。F1ではなくDTMだったが、豪雨のレースで4輪駆動のアルファロメオ155とFRのベンツが同等のスピードで走るシーンを見せていた。ベンツはESPを装備していたのだが、旋回中の車両にスピンモーメントが発生すると、即座にそれを打ち消す逆方向のアンチスピンモーメントを発生させ、限界スピードでのコーナリングを可能にした。ブレーキシステムを4輪独立電子制御化することで可能となった装置だが、電子デバイスなくして実現は不可能だった。

 こうした車両挙動安定装置は、トラクションコントロールシステムを協調介入させることにより、限界領域付近での旋回を可能にしたシステムなのだが、ドライバーの車両操縦技術とは無関係に限界コーナリングが可能なシステムという現実からすると、すべて機械仕掛けはいかがなものかと、いまひとつ釈然としない装置でもある。

 極論だが、電子デバイスを無制限で認可すると、強力なハイブリッドシステム、ダウンフォース自在の可変ウイング、車両挙動安定装置、GPSとコースデータをマッチングさせた全自動運転もできる。ドライバーが車両に搭乗する必要もなくなり、シミュレーター機同様の操作システムでレースは可能。ただ、果たしてモータースポーツとしてファンの支持を得られるかどうか、将来的に存続できるものなのか否か? 電子デバイスの使用に制限を設けることは、人間操作の介在を残すための妥当な判断といえるのだろうか。電子制御技術の進歩は、こんな懸念を生む時代になってしまった。


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