いまやターボに弱点なし! ネガを消し去った現代技術とレーシングドライバーが教える最新ターボ車を操るテクニック (1/2ページ)

パワーとレスポンスを大きく左右するA/R比

 ターボチャージャーの性能を語るうえで欠かせないのが、A/R比という特性値である。

 これは、タービンハウジングの断面積(A)と、タービンホイールの中心からノズル入口までの半径(R)の比率を示す。A/R比が小さければ、低回転域からタービンが素早く回転し、ターボラグが小さくレスポンスにすぐれる。しかし、高回転域では排気抵抗が大きくなって高出力を維持しにくい。

 A/R比が大きい場合は高回転域での排気抵抗が少なく、高出力の維持に適している。しかし、タービンが回転し始めるまで時間がかかり、ターボラグが大きくなる。このA/R比の選択がターボエンジンの性格を大きく左右する。小径タービンや可変A/R比ターボの採用など、メーカーはA/R比の最適化で幅広い回転域で性能向上を図り、開発を続けているわけだ。

 ターボにはいくつかのデメリットがある。代表的なのが前記したターボラグだ。アクセルを踏み込んでから過給が始まるまでの時間差を言う。とくに大径のタービンを使用する場合は、この傾向が顕著に現れ、アクセル操作と実際の加速にズレが生じることがあった。

 また、排気ガスという非常に高温のエネルギーを利用するため、タービンや周辺部品はつねに高熱にさらされ、耐久性や信頼性を損なっていた。インタークーラーによる吸気温度の冷却や、素材の選定、熱害対策といった工夫が求められる。

技術の進歩で克服した最大の弱点”ターボラグ”

 デメリットを克服し、性能向上のために図られた技術的進化は、たとえばツインターボ化がある。初期には、大小異なるタービンを組み合わせるシーケンシャルツインターボが登場し、低回転域での応答性と高回転域での出力を両立させようとした。

 またターボチャージャーの回転部は、タービンブレードやシャフトの素材改良、軽量化により、低慣性化が進んでいる。これにより、ターボラグは大幅に縮小され、アクセルレスポンスは自然吸気エンジンに迫るレベルにまで改善されている。

 さらに電動アシストターボ(E‒ターボ)も導入され始めている。タービンシャフトにモーターを組み込むことで、排気ガスのエネルギーが十分でない低回転域でも、モーターでタービンを強制的にまわし、過給圧を瞬時に立ち上げることが可能になった。

 こうして、現代のターボエンジンは、かつて”ドッカンターボ”と形容されていた頃のようなピーキーさは影を潜め、非常に扱いやすく、かつパワフルな特性を引き出せている。

 一方、出力特性を決定する過給圧制御はターボエンジンの性能を最大限に引き出すうえできわめて重要である。現代のエンジンでは、ECU(エンジンコントロールユニット)が精密に過給圧を制御している。

 しかし、過給圧が目標値を超えるオーバーシュートが発生することがある。これは、タービンの回転速度が急激に上昇し、ウェイストゲートバルブの開閉制御が間に合わない場合に起こりうる現象だ。短時間のオーバーシュートはパワーの増加につながるが、過度なオーバーシュートはノッキングを誘発し、エンジンの耐久性を損なうため過給圧制御は厳しく管理する必要がある。


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中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2026-2027日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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