丁寧な運転だけではダメでときには大胆にまわすことも必要
「高速道路を長距離走ってナラシをする」という人もいる。じつはこれ、駆動系のナラシとして一定の効果は見込めるものの、エンジンのナラシとしては不十分なのだ。
高速道路の運転画像はこちら
なぜか? 高速道路ではほとんど低回転を使って一定速度で走るため高回転のアタリがつかないのだ。運転が得意ではなく、高回転までまわさない人のクルマは、スポーツタイプでも高回転が軽くまわらないという事実がある。いわゆる「高回転のアタリがついていない」状態だ。
シリンダーの内壁に接触しているピストンリングやピストンは、低回転で接触する部分と、高回転で接触する部分が微妙に異なる。高回転でまわるクセのついていないエンジンは、ナラシを終えても高回転で軽まわらないエンジンに育ってしまうのだった。
したがって、走行距離が2000kmに達したあたりから(周囲の安全を十分確認しながら)ときどきレッドゾーン付近まで一気にまわして高回転のナラシを行うことを勧めたい。ナラシの基本は丁寧な運転を心がけることだが、ときにはエンジンを高回転まで大胆にまわすことも大事。必要以上に神経質になることはない。そもそも新車は完成直後の車両チェックの際、レッドゾーンまでまわしてテストされているのだから……。
メーターのレッドゾーン画像はこちら
大量の鉄粉を吐き出すトランスミッション
トランスミッションのナラシもエンジンと同じくらい愛情を注ぎたい。
ミッションは鉄製の歯車(ギヤ)の集合体。高速でまわるギヤとギヤの噛み合わせを変えて変速するわけだから削りカス=鉄粉が大量に出て当然。そこにギヤを選択するための部品も同居している。これらをスムースに動かす目的でオイルもしくはフルード(作動液)が入っているのだが、エンジンオイルほど大事にされていないようす。
トランスミッションのカットモデル画像はこちら
浄化用のフィルターを設けるATに対し、MT(2ペダルを含む)では鉄粉をわずかにドレンボルトに設けられた磁石などに吸着させるのみで、あとは汚れ放題。MTのナラシは変速のフィーリングにも大きく影響するため完璧なナラシを目指すならマメなオイル交換と慎重なシフト操作は必須と考えるべきだ。
一方、ATの作動液=フルードは、不用意な交換で深刻な不具合を生じることもあり、メーカーによっては「無交換」が推奨されているケースもあるため、ディーラーにアドバイスを求めるのが賢明だ。
なお、FF車のデフオイルはミッションオイルと共用だが、FR車や4WD車のリヤデフは独立しているので、これも個別の交換が必要。やはり新車は大量の削り粉=鉄粉が出る。1000km走行時を目安とした交換が望ましい。
ATFの交換画像はこちら
周囲の環境にも優しい走りながらの暖機が正解
ナラシ運転と同様、要・不要で意見が二分するのが「暖機運転」だろう。
エンジンだけに限って言えば、「不要」と考えていい。なぜなら、エンジンから排出される有害な排気ガスを浄化するための触媒は、約250〜300℃以上の熱を持たないと機能しない。停止した状態のアイドリングは、周囲に毒ガスを撒き散らしているのに等しい行為だからだ。
さらに言えば、トランスミッションやデフといった駆動系は走らないとオイルが循環せず、発熱もしないため暖機は不可能。とくに冷え切った冬季に無理にストレスを与えれば、ギヤに与えるダメージは小さくない。特別なことは必要ない。水温計が動き出すまで、2〜3kmゆっくり走ればいいだけのことだ。
アクセル・ブレーキ・クラッチペダル画像はこちら
今回は、エンジンと駆動系に絞ってナラシと暖機について触れた。メカ的な話もさることながら、速度を抑えた丁寧な運転によってオーナーが徐々に新車に慣れていくことこそ、ナラシ運転でもっとも大事な目的かもしれない。
※本記事は雑誌「CARトップ2026年10月号」の記事を再構成して掲載しています