いまでは一部マニアから絶大な支持を受けている
23馬力モーターと「マニュアルトランスミッション」
エレクトリカー007のスペックは、現代のテスラや日産サクラに慣れた私たちから見れば、ひっくり返るほど原始的。搭載された直流(DC)モーターの最高出力はわずか23馬力で、重い車体を動かすには圧倒的にパワー不足。そこでジェット社は、ベース車の4速MTをそのまま残すという画期的なアイディアを投入したのです。
ドライバーは、タコメーターの代わりに設置された電流計を睨みながら手動で変速し、モーターの効率のいい回転域を、人の手で維持しながらドライブするというわけ。「EVなのにマニュアル車」。メカ好きの心をくすぐる仕様ですが、裏を返せば、それだけ技術が未熟だった証拠にほかなりません。
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また、リチウムイオン電池など影も形もない時代ですから、搭載されたバッテリーはズッシリと重い「6ボルトの鉛蓄電池」。これを後部座席から荷室にかけて、なんと15〜20個も敷き詰めるという荒業。バッテリーの総重量だけで約500kgに達し、これは車両重量の半分近くを占めていたのだとか。
この超重量級のボディに対して23馬力ですから、「加速は永遠に続くかと思うほど遅い」と当時の記録にあります。最高速度はなんとか100km/h強に達し、航続距離は公称約80kmとされていましたが、お世辞にも実用性などという言葉は使えません。
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現代に語り継がれる早すぎた挑戦の価値
現在、このエレクトリカー007は、世界にわずか50台前後しか現存していないとのこと。ときおりアメリカのオークションに姿を現すと、「早すぎたEVの未来を体現したタイムカプセル」として、マニアの間では高値で取引されています。
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技術が追いつかないなかで、迫り来るエネルギー危機にアイディアと情熱だけで立ち向かったジェット社の挑戦。ガソリン臭い旧車も面白いものですが、こんな「電気の匂いがビリビリしている珍車」に思いを馳せるのも、また一興ではないでしょうか。