カウンターステアの要は切る量と戻すタイミング
オーバーステアは前輪に対して後輪の横グリップが不足し、車両の向きが旋回内側へ過剰に変化していく状態だ。雨で濡れた路面や雪道での急なアクセル操作、コーナリング中の急激なアクセルオフ、後輪駆動車での過大な駆動力変化などが代表的なきっかけになる。
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リヤが流れ始めると車体にはヨー運動が発生する。このヨーレートが小さい段階なら修正が可能だが、増大すると人間の操作だけで収束させることが難しくなる。
基本的な対処は、前輪を進行すべき方向へ適切にカウンターステアを当て、リヤタイヤが再びグリップするのを待つことだ。しかし重要なのはカウンターの「量」だけではない。「戻すタイミング」がさらに重要になる。リヤタイヤがグリップを回復した瞬間にも大きなカウンター舵角が残っていれば、今度は反対方向への強いヨーモーメントが発生する。オーバーステアを止める操作が、次のオーバーステアを生んでしまうわけだ。
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ブレーキを踏むしかない制御不能のスピンモード
オーバーステアがさらに進んでドライバーの修正能力を超え、ヨーレートが増大すると車両はスピンモードへ陥る。
ここで重要なのは、自身が「どこまでなら立て直せるか」を冷静に判断することだ。ヨー角とヨーレートが大きくなった状態から無理に車両姿勢を戻そうとすれば、反対側への振り返しやコースアウトの可能性を大きくする可能性がある。ESC(横滑り防止装置)装着車なら、まずシステムの制御を妨げるような過大な操作を避ける。視線を進みたい方向へ向け、ステアリング操作を必要以上に大きくしないことが基本だ。
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そして完全にスピン状態に陥って、制御できない段階だと判断したならブレーキを強く踏み込む以外にない。
一般道では対向車、歩行者、ガードレール、電柱など危険因子が多く存在する。サーキットのような広いランオフエリアはない。旋回限界を試すこと自体が許されない。冬季に突然路面が凍っていたり、緊急回避で障害物を避けたあとなど、意に反してスピンモードに陥ってしまったら、ブレーキを踏み続ける以外に一般ドライバーができることはほとんどないと考えたほうがいいだろう。
重大なトラブルを招く残り溝と空気圧の不良
激しい降雨の高速道路で突然ステアリングが軽くなり、操舵してもクルマが反応しなくなる。代表的な原因が「ハイドロプレーニング現象」だ。タイヤはトレッド溝によって路面上の水を排出しながら接地している。しかし速度が高く、水深が深くなり、排水能力を超えるとタイヤと路面の間へ水が入り込み、タイヤが水膜の上に浮いた状態になる。
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ハイドロプレーニングが起こってからステアリングを切っても、接地していないタイヤは横力を発生させられない。大きな操舵を加えたまま路面の水がはけて突然グリップが回復すると、車両が急激に向きを変える危険がある。
ハイドロに遭遇したらアクセルをほぼ一定に保ち、ステアリングを直進状態に保ったまま水深が浅くなるまで待つ。急ブレーキ、急操舵は避けなければならない。
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また、タイヤの不具合が事故に直結するケースでは「スタンディングウェーブ現象」も顕著だ。
タイヤは接地面で変形し、接地面を離れると元の形状へ戻る。この変形と復元を高速で繰り返している。空気圧が不足した状態で高速走行すると変形量が増大し、変形したタイヤが十分に復元しないまま次の接地を迎えるようになる。すると接地部のタイヤ外周に波状の変形が発生する。
この状態ではタイヤの内部で激しい発熱が生じる。構造材の損傷やトレッド剥離を招き、最終的にバースト=破裂に至る。
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ドライバーはステアリングを通じて通常と異なる振動を感じるはずだ。
対策は事前管理に尽きる。指定空気圧に調整し、長距離高速走行の前にはタイヤの傷、偏摩耗、ひび割れ、残り溝なども確認する。タイヤから異常を感じたら、アクセルを戻し、車両を安定させながら減速し、安全な場所で停止してタイヤを確認するべきである。
講師 中谷明彦
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全日本F3000/ツーリングカー選手権などでの優勝、ル・マン24時間をはじめとした海外レースでも活躍するなど経験/実績豊富なレーサーであり、理論派モータージャーナリスト。新車やタイヤの開発にもかかわり、4WD車や電子制御による車両運動性能の解析を得意分野とする。ドライビングアカデミー「中谷塾」を主宰し、現インディカードライバー・佐藤琢磨らを輩出している。
※本記事は雑誌「CARトップ2026年10月号」の記事を再構成して掲載しています