超原始的でありながら確実なシステムを搭載 「959 」を語る上で欠かせないポイントのひとつに、タイヤがある。このクルマに純正装着されているのは、ブリヂストンの「ポテンザ RE71」だ。これだけ聞けば「だから?」となるのも無理もないが、これは日本の自動車史を語る上で重要な出来事なのだ。
ポルシェ959に装着されたブリヂストンタイヤ 画像はこちら
なぜなら、あの世界のポルシェ 、それも「959」という怪物に日本のタイヤが純正採用されるなぞ前代未聞。300km/h以上の領域で走るためのランフラット性能、高速性能、操縦安定性、フィーリングを満たすこのタイヤを、ブリヂストンは1年で開発。1986年に技術承認を取得し、ほぼ100%を納入することに。さらにこのタイヤは、「PAバッジ」という社内の有資格者しか作れなかったという。そんな「RE71」の名称は、現在でもブリヂストンのスポーツタイヤとして愛されている。なお、ブリヂストンのほかに、ダンロップからも、パンク時にビードがリムから外れにくいデンロック構造(ランフラット技術の先駆け)を採用した、「DENLOC SP SPORT D40/M2」が供給されていた。
ポルシェ959のタイヤとホイール 画像はこちら
そして、極限の性能を求められるタイヤを支えるホイールもまた、それ相応でなければならない。よって「959」には、スポーク内が中空構造となっている、センターロック方式の専用ホイールを採用している。しかも素材はマグネシウムを用いており、もちろん超軽量かつ高剛性。製造はWRC車両への採用でもお馴染みのスピードライン。サイズはフロントが8J、リヤが10Jでどちらも17インチだ。
ポルシェ959のホイール 画像はこちら
しかし考えてみてほしい。もし万が一、高速域で走っている最中にホイール、もしくはタイヤに異常が発生したらどうなるか。もちろん命に関わるのは明白だ。そこでポルシェが編み出した仕組みがユニークだった。というのも、先ほど述べた中空構造のホイール”そのもの”を、空気圧センサーにしてしまおうというものだ。
つまりどういうことか。なんとこのクルマに使われているホイールは、タイヤの空気がスポーク内などにも充填されているのだ。なので、リムの裏側にもいくつか大きな穴が開けられている。そのような仕組みから、「959」は、ホイールそのものが空気圧センサーのような役割を果たしているのだ。このような仕組みなので、ホイールが割れたりクラックが入っているとタイヤからエアも抜ける。
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かなり原始的だが、極限下で走ることを視野に入れたスーパーマシンならではの工夫だ。また、当時では珍しい、空気圧センサー(TPMS)をどこよりも先駆けて装備している。これはボッシュと共同開発した専用品だ。タイヤはもちろん、ホイールに異常があってもこのセンサーが反応し、ドライバーに異常を知らせてくれる。こうした機能をもたせた理由のひとつに、マグネシウムホイールは軽量だが割れやすいという特性があってのことだったといわれている。
タイヤだけでなく、ホイールの異常まで知らせてくれるシステムは、実際にはそう多くない。似たようなものでは、アルピナのマルチスポーク・アルミホイールも、1本だけスポーク内が中空でタイヤにアクセスできるようになっており、そこからエアが充填できるようになっている。ただこれはホイールの異常を知らせる目的ではないので思想はやや異なる。
最後に余談だが、「959」は6速MTを搭載しているものの、シフトノブにはRのほかに1〜5の数字が刻まれている。6速では? と思うだろうが、じつは見慣れない「G」という位置がある。これは「Gelände(ゲレンデ)」の「G」であり、悪路用のローギヤという設定だ。「959」がラリーに代表される悪路で活躍することを念頭において開発されたクルマであることが感じ取れる部分だ。
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このように、泣く子も黙る伝説の「959」は、ポルシェの創意工夫が凝縮された、当時における走る技術見本市なのだ。