スーパースポーツカーはバネ下だけで普通車1台分
サスペンションアーム同様、サスペンションスプリングより下方にあるブレーキシステムやアップライト、ホイールやタイヤなども”バネ下重量”として運動性能に大きな影響を及ぼす。
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タイヤは動力性能の向上とともに年々インチアップとトレッドの拡大が図られ、19~21インチといった大径タイヤが採用されるようになった。最高速度300km/hを謳う高性能車では、それに耐え得る剛性を持たせたタイヤを装着しなければならない。
タイヤはバネ下重量の大部分を占め、ホイールと合わせれば相当な重量になる。タイヤの内部構造にはカーカスやスチールベルトなどの構造があるが、こうした部分にもケブラーコードやカーボンを用いて軽量化している。当然、コストアップは避けられず、近年のスーパースポーツカーが2000万円超という高額な価格になる一因になっている。ブレーキもカーボンディスクを採用し、アルミ製のキャリパーを備えればバネ下だけで一般的なモデルが1台買えてしまうほどのコストがかかってしまうのだ。
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ガソリンエンジンやトランスミッションもまた重量がかさむ。かつては鋳鉄のシリンダーブロックが当たり前だったが、軽量化のためにオールアルミ化が図られる。トランスミッションもケースをアルミ製とし、FRなどプロペラシャフトを備える車両ではプロペラシャフトを中空やカーボン製にするなどしている。
今後のEVが目指す軽量化と低コストの両立
こうした努力を重ねてなお、年々車重が重くなるのは、さまざまな規制に対応させるためだ。
強度を高める目的で溶接を増やせば重量が増すので、接着剤が多用されるようになった。オールアルミ製のボディを採用しているイギリスのアストンマーティンなどはリベットや溶接をいっさい用いず、すべて接着剤で組み立てている。
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ウインドウガラスもまた重たい部分だ。しかも重心を高める位置にあるため軽量化が必要だ。合わせガラスにして遮音性を高める高級車もあるが、一般的なクルマの場合、薄板ガラス化して重量を軽減している。
さらに車体モノコックの大部分を構成する鉄板も重い。こうした部分も薄板材を用いて軽量化する。衝突エネルギーの吸収に必要な部分は高強度の材料として、それ以外は薄いパネルを使う。最近ではこうしたテーラーメイド(特別仕立て)化された車体づくりが求められている。
BEVなどの電動車になると軽量化はさらに難しい。まず駆動用バッテリーは軽くできない。それどころか大容量のバッテリーを搭載して高い性能を引き出すことで、バッテリーのクーリングが重要となり、現在ではバッテリーまわりにウォータージャケットを巡らせた水冷式が求められるようになっている。
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モーターも同様に水冷式の採用が増えている。当然、重量が大幅にかさむので、ほかの部分の軽量化が必要になってくるのだ。
BEVの駆動用バッテリーは単体で500kg近くもあり、それを搭載する車体(主にフロア下)は強度を高める必要がある。衝突強度だけでなく、捻り剛性などの走行性能や経年変化にも耐えなくてはならないので、最新のBEVの傾向は従来のビルトイン方式から完全に車体と一体化する手法が取られるようになってきている。
バッテリー性能が低下したら新しいものと交換するという概念は通用しなくなってきていて、エンジンと同じように、バッテリー寿命と車体の寿命をほぼ同じにすることで、軽量化と低コスト化の両立を見込んでいるのだ。
軽さで速さを極めるモータースポーツの世界
レーシングカーにおいて軽量化は命題だ。レギュレーションで最低重量が定められている場合でも、より軽く仕上げることができれば、バラスト=重りを低重心の理想的な位置に配置して操縦性を向上させることができる。
近年のF1マシンを見れば一目瞭然だが、ウイングなどの外装パーツやモノコックはフルカーボンで軽くし、ステアリングやメーターの軽量化にもこだわる。ドライバーが装着するヘルメットやハンス(頭部と首のプロテクター)も超軽量の特別なものだ。
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予選アタックでは消費燃料を緻密に計算し、ギリギリの燃料でアタックする。それはグラム単位の厳しさ。重量管理はきわめて重要で、ゴール後のドライバーはコース上のデブリ(タイヤ接地面のカス)を拾うように走り、タイヤが摩耗した分の重量を回収しようとする行動も見ら
れる。速さに非常に大きく影響する車重だけに、モータースポーツではより厳格に管理されているのである。
講師 中谷明彦
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全日本F3000/ツーリングカー選手権などでの優勝、ル・マン24時間ほかの海外レースで活躍するなど経験・実績豊富なレーサーであり、理論派モータージャーナリスト。また、現インディドライバー・佐藤琢磨をはじめとするレーシングドライバーを多数輩出したドライビングアカデミー「中谷塾」を主宰する。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
※本記事は雑誌「CARトップ2024年10月号」の記事を再構成して掲載しています