この記事をまとめると
■路線バスの運転士が全国的に減少傾向にある
■大分交通などでは高校生を対象に路線バスの運転士を職業体験で経験できる
■受け入れ態勢や法律の壁など採用プロセスには課題がある
職業体験で路線バスの運転士の世界へ
全国的な路線バスの減便や廃止が相次ぐなか、深刻化する運転士不足に対応するためのユニークな試みが、大分県で注目を集めている。地元の公共交通を担う大分交通などが、高校生や学校関係者をターゲットにした「大型バスの運転体験会」を本格化させているのだ。
2026年1月には、大分県立佐伯鶴城高校の生徒たちが主導する形で、高校生向けのバス運転体験会を開催。また、これに連動する形で同年2月には、大分交通の大分営業所(大分市)において、大分県内の高校で進路指導や担任を受けもつ「教職員」を対象とした、初の運転体験会も実施されている。
これらの催しは、運転免許をもたない高校生(あるいは普通免許のみの若者や教員)が、自動車学校の敷地や営業所のクローズドコースを利用し、本物の大型路線バスのステアリングを握るという、じつに大胆なイベントなのである。背景にあるのは、いうまでもなくコロナ禍以降に加速した運転手不足だ。大分交通のデータを見ても、この7年で運転士数が約3割減少するなど、地域の足の維持は瀬戸際に立たされている。
大分交通の路線バス画像はこちら
従来の「免許取得者を募る」採用活動では、もはや追いつかない。そこで打ち出されたのが、「まずはバスの運転の楽しさを知ってもらい、就職を考える際に選択肢に入れてもらおう」という、若年層への直接アプローチである。教員向け体験会にいたっては、「進路指導のキーマン」である先生自身がバスの魅力を体感し、生徒に勧めてもらおうという狙いがある。
これらの施策は、同社が展開するSNS戦略(YouTubeなどでの職人技チャレンジ動画など)ともシンクロさせ、単なる「お仕事体験」で終わらせず、LINEを活用して気軽に応募できる仕組みを整えた結果、高校生のバス業界に対する心理的ハードルが大幅に下がったという。実際に同社がここ2年で採用した約30人のうち、約6割がSNSや体験イベントをきっかけに入社を決めており、若年層の掘り起こしに大きな効果を上げた。
大分交通の大型バス運転体験会の様子画像はこちら
一方で、以下のような課題や改善点も見えてきている。
・受け入れキャパシティの限界
安全確保のため、1回あたりの参加人数を数名~30名程度に絞らざるを得ず、効率面での課題がある
・免許取得までのタイムラグ
高校生が、大型二種免許を取得できるようになるまでには法的な年齢制限(特例措置はあるものの原則19歳以上など)がある。そのため、体験から実際の採用・就業までに数年のギャップが生じ、この間のモチベーション維持が難しい
・コストとリスク
教習車や営業所内におけるイベント用コースの確保、インストラクターとして現役運転手を配置するためのコストに加えて、車両の接触などといった万一の事故リスクがある
今後は、体験した高校生をフォローし続ける仕組みづくり(内定者インターンシップの拡充など)や、ほかの県・ほかの事業者との連携による規模の拡大といった改善策が取られることになるだろう。
「バスを運転する格好よさ」を直感的に伝えるこの試みは、自動車文化の裾野を広げる意味でも、全国のバス事業者が注目すべき好例といえるのではないだろうか。