この記事をまとめると
■2020年にトヨタは北米でコンパクトSUVの「ヴェンザ」を復活させた
■現行のトヨタ・ヴェンザは日本のハリアーの海外仕様モデルとなる
■もともとのヴェンザにはカムリ ✕ SUV ✕ ステーションワゴンっぽい雰囲気があった
トヨタ・ハリアーの双子モデル「ヴェンザ」
おお、ヴェンザ復活か。コロナ禍に、トヨタが発表した海外モデルの名前を見て、そう思った。
2020年にアメリカで、翌2021年には中国で発売されたトヨタのSUVだ。どんなクルマかといえば、日本人なら写真を見ただけで「ハリアー」だとすぐわかる。
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背景にあるのは、米中市場でのSUVセグメントのさらなる拡大だ。アメリカでは、長年に渡り市場の中核だったC/Dセグメントセダン(中小型セダン)で2010年代からコンパクトSUVシフトが加速した。コンパクトといっても、日本とは違い、「RAV4」や「CR-V」が該当する。ちなみに、日本のコンパクトは、グローバルでのBセグメントにあたる。
コンパクトSUVシフトに限らず、アメリカSUV市場が大きいことは、日本のユーザーにも広く知られているところだ。直近では、乗用車市場の7割強がライトトラック。つまり、SUVとピックアップトラックのことだ、1990年代後半から2000年代前半にかけて、旧デトロイト3(GM、フォード、クライスラー[現:ステランティス])が一斉に、ミッドサイズSUVとフルサイズSUVを拡充したのが、SUV市場拡大のきっかけだった。
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それを追って、トヨタ/レクサス、ホンダ/アキュラ、日産/インフィニティもSUV拡大路線を敷いた。さらに、BMW、メルセデス・ベンツ、ポルシェがSUVを相次いで量産するようになったという経緯がある。こうしたSUVシフトのなかで、各メーカーはモデルラインアップに独自性を見出そうと動き出した。いわゆる、クロスオーバーという考え方だ。
たとえば、SUVとピックアップトラックのクロスオーバーとして、SUT(スポーツ・ユティリティ・トラック)が生まれた。シボレー「アバランチ」などが該当する。
一方で、SUVとセダンをクロスオーバーさせようという試みもあった。その一例が、トヨタ「ヴェンザ」である。
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2008年の北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)でワールドプレミアがあった数カ月後、筆者はカリフォルニア州にあるトヨタのデザインスタジオ「キャルティ」を訪問した。すると、そこにはヴェンザのデザインスタディモデルがあった。
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トヨタのデザイナーにヴェンザについて話を聞くと、「カムリを卒業した人が、アメリカブランドのSUVに買い替えるのではなく、トヨタらしい、日常生活にちょうどいいクロスオーバーがほしいと思ってもらうのが狙い」と話してくれた。
なるほど、ヴェンザには、カムリ ✕ SUV ✕ ステーションワゴンっぽい雰囲気がある。